最新記事

ロシア

ロシア経済が制裁する側の西側よりよほど好調そうなわけ

In Moscow, Shoppers Feel Far Less Pain than Americans from Ukraine War

2022年6月16日(木)19時14分
マイケル・ウェイシウラ

撤退したマクドナルドの後、ロシア製ハンバーガーで繁盛する後継店(モスクワ、6月12日の開店日) Evgenia Novozhenina-REUTERS

<ルーブル下落に債務不履行、モノ不足や失業で国民の不満が爆発、反プーチン・反戦デモが巻き起こるシナリオはどこへ行ったのか>

ウクライナ東部での血みどろの攻防戦をよそに、ロシアの首都モスクワでは今も侵攻前とほとんど変わらない日常が続いている。マクドナルドなど西側ブランドのロゴマークは通りから姿を消したが、公園やカフェはいつもどおりの賑わいを見せている。

「消費行動にはこれと言った変化は見られない」と、モスクワのトベルスコイ地区のヤーコフ・ヤクボビッチ区長は本誌に話した。「多くの商品やサービスの価格が上がったが、人々は特に困っていないようだ」

初夏に入り、市内の道路では恒例の季節的な自転車専用レーンの設置と歩道の拡幅整備が進んでいる。

「わが区では最近、公共サービス向上のための予算を8%増額できた」と、ヤクボビッチは胸を張る。

実際、首都を見て回った印象では、この国が戦争中とは嘘のようだ。

例年と変わらず夏の訪れを謳歌するモスクワっ子たち──2月24日のウクライナ侵攻を受けて、西側諸国がロシアに過去最大級の経済制裁を科したときには、誰も予想しなかった光景だ。

中国製品で物不足解消

制裁の影響で西側からの製品の輸入がほぼ完全にストップすると、ロシアの小売業者は代わりの仕入先を探し始めた。

ハンバーガーなら類似品を国内で作れても、より高度な技術が必要とされる製品では、国産品はおろか輸入品でも、これまでと同レベルの品質はまず望めない。それでも中国などからの輸入が増えたおかげで、物資不足は解消されつつある。

対中貿易を専門とする貿易運輸会社の経営者が、アレクサンドルという仮名で本誌の取材に応じ、侵攻開始直後には身近な製品が深刻な品不足に陥ったと話してくれた。

「3月には紙が手に入らなくなった。わが社は注文を受けて、350台の大型トラックで(中国製の)紙製品を運んだ。今は紙不足は解消した」

紙に限らず、多くの消費財の品薄状態は解消したが、品質の低下は否めないと、アレクサンドルは言う。

「例えば靴にしても、より安い製品の注文が増えた。以前ならそういう靴はもっぱら地方向けだったが、今はモスクワにも運んでいる。首都でさえ、安物を求める人が増えたのだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ

ワールド

イスラエル、イランガス田にも攻撃 応酬続く 米・イ

ワールド

米首都で34年ぶり軍事パレード、トランプ氏誕生日 

ワールド

米ミネソタで州議員が銃撃受け死亡、容疑者逃走中 知
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中