最新記事

ウクライナ情勢

ロシアのウクライナ侵攻から1カ月 西側は制裁強化、プーチン政権に亀裂も

2022年3月24日(木)10時11分
爆撃による煙が立ち上るウクライナ首都キエフ

ロシアによるウクライナ侵攻開始からまもなく1カ月が経過する中、23日もロシア軍による首都キエフに対する爆撃が続いた。写真はキエフ近郊で、爆撃による煙が立ち上る様子(2022年 ロイター/Gleb Garanich)

ロシアによるウクライナ侵攻開始からまもなく1カ月が経過する中、23日もロシア軍による首都キエフに対する爆撃が続いた。西側諸国の首脳が対応強化を協議する一方、ロシアでは大統領特使のアナトリー・チュバイス氏が辞任。プーチン政権内部に亀裂が出始めている可能性が示唆された。

ロシア「非友好国」へのガス販売をルーブル建てに変更

ロシアのプーチン大統領はこの日、諸外国によるロシア資産凍結は信頼を失わせる行為だと指摘し、「非友好国」にルーブル建てで天然ガスを売却し始める方針を表明。契約通りに天然ガスの供給を継続するが、支払い通貨をロシアルーブルに変更するとした。

こうした中、複数の関係筋がロイターに明らかにしたところによると、ソ連崩壊後のロシアの経済改革を主導したアナトリー・チュバイス氏がロシア大統領特使を辞任し出国した。関係筋によると、チュバイス氏はウクライナ紛争を理由に出国し、ロシアに戻るつもりはないという。

西側の対応

バイデン米大統領はこの日、ロシアのウクライナ侵攻や対ロシア制裁などを巡り協議するため、ベルギーとポーランド訪問に向け、米国を出発した。24日にブリュッセルで北大西洋条約機構(NATO)緊急首脳会議や先進7カ国(G7)首脳会議、欧州連合(EU)首脳会議に出席し、ウクライナ支援に向けた国際的な取り組みを協議する。

NATO緊急首脳会議に先立ち、ストルテンベルグ事務総長は記者会見で、ロシアに近い欧州東部の防衛力増強が決定される公算が大きいと表明。ウクライナを巡る危機でNATOが長期的な抑止力と防衛態勢を再考する必要があることが明らかになったとし、この件については6月にマドリードで開かれる次回の定例首脳会議で討議されると述べた。

ただストルテンベルグ氏は、NATOがウクライナに派兵することはないと言明。「ウクライナに支援を提供することは極めて重要だ。同時に、この紛争がNATOとロシアとの全面戦争に発展するのを防ぐことも極めて重要だ」と述べた。

このほかこの日は、ジョンソン英首相がウクライナへの支援を確約。ジョンソン首相と会談したゼレンスキー大統領はツイッターで「24日の重要な会議の前夜にジョンソン氏の支援に対する確約を得た。敵対行為の経過とウクライナへの防衛支援について協議した」と明らかにした。

ウクライナへの攻撃継続

ロシアによる侵攻開始以来、ウクライナでは人口4400万人の約4分の1が住み慣れた土地を離れざるを得なくなっている。

首都キエフのクリチコ市長は「ロシア軍は首都に対する攻撃を続けている」とし、キエフで264人の民間人がロシア軍の攻撃で死亡したと述べた。ただ、キエフ近郊のマカリフとイルピンはウクライナ軍が奪還したと明らかにした。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ロシア戦車を破壊したウクライナ軍のトルコ製ドローンの映像が話題に
・「ロシア人よ、地獄へようこそ」ウクライナ市民のレジスタンスが始まった
・【まんがで分かる】プーチン最強伝説の嘘とホント
・【映像】ロシア軍戦車、民間人のクルマに砲撃 老夫婦が犠牲に


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉄鋼関税、2倍の50%に引き上げへ トランプ米大統

ビジネス

アングル:トランプ関税、世界主要企業の負担総額34

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中