最新記事

イスラエル

イスラエル政治が大混乱...その陰で「争点ですらなくなった」パレスチナ問題

The Real Losers of Israel’s Election

2021年4月14日(水)18時17分
バーナビー・パパドプロス
ネタニヤフ支持者

熱烈な支持者もいるネタニヤフだが批判派も多い(3月24日) RONEN ZVULUNーREUTERS

<連立政権協議が難航して再選挙もささやかれる一方でパレスチナ問題は争点にさえならなくなった>

イスラエルでは2年間で4回目となる総選挙が3月23日に実施されたが、政治的な麻痺状態が解消されるのではないかという期待は裏切られた。

現職のベンヤミン・ネタニヤフ首相が率いる右派リクード党は、最多議席を獲得したものの単独過半数には届かなかった。連立政権をめぐる議論が続いているが、見通しは立っていない。

クネセト(議会)の過半数は61議席。現段階でネタニヤフが支持を得ている52議席は右派と極右勢力で、反ネタニヤフ派は45議席前後で推移している。7議席を獲得した中道右派のヤミナや、アラブ系イスラエル人の新党で4議席を獲得したアラブリスト連合などは態度を表明していない。

4月6日にルーベン・リブリン大統領はネタニヤフに組閣を指示したが、一方で、誰が首相候補でも組閣は成功しそうにない、とも語っている。

要するに、今回の選挙に勝者はいない。しかし、敗者が誰なのかは明らかだ。

「今回の選挙で、パレスチナ人はほとんど注目されなかった」と、人権団体ICAHD(パレスチナ人家屋の破壊に反対するイスラエル委員会)に協力している人類学者のジェフリー・カプランは言う。

パレスチナ人の権利や、ヨルダン川西岸地区の占領とガザ地区の封鎖について、「左派はもちろん、アラブ系の政党も選挙活動では取り上げなかった。占領とパレスチナ人と平和の問題全体が軽んじられている。パレスチナ人はイスラエル国内でも国際的にも、政治の地図から消された」。

西岸地区とガザ地区に暮らす約500万人のパレスチナ人はイスラエル国民ではないため、今回の選挙で投票権はなかった。しかし、イスラエル国民の選択は、パレスチナ人社会に大きな影響を与える。彼らの生活は、イスラエルの国としての行動に多くの形で支配されるのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米政権、デルタとアエロメヒコに業務提携解消を命令

ワールド

ネパール抗議デモ、観光シーズン最盛期直撃 予約取り

ワールド

世界のLNG需要、今後10年で50%増加=豪ウッド

ビジネス

午前の日経平均は続伸、一時初の4万5000円 米ハ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中