最新記事

中国

中国進出企業は今すぐ撤退せよ

LEAVE CHINA NOW

2021年3月31日(水)07時00分
エリザベス・ブラウ(アメリカン・エンタープライズ研究所研究員)
ウイグル人労働者が働く山東省青島市の靴工場

ウイグル人労働者が働く山東省青島市の靴工場には、中から逃げられないように有刺鉄線が ANNA FIFIELD-THE WASHINGTON POST/GETTY IMAGES

<中国では27の工場がウイグル人を使っており、82のブランドの製品や部品を製造している。強制労働に加担してはいけない。サプライチェーンを再構築し、消費者の信頼を勝ち取るべきだ>

最近の調査によると、中国に進出したドイツ企業の96%が今のところ撤退を考えていないという。理由は単純。儲かるからだ。ただ中国での事業展開にはリスクもある。

シンクタンク「オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)」の2020年の報告書によると、2017年以降、中国の9つの省の27の工場が新疆ウイグル自治区出身のウイグル人を使っている。

これらの工場は世界的に知られた82 のブランドの製品や部品を製造していて、「一部の工場は『再教育キャンプ』から直接連れてこられたウイグル人に強制労働をさせている疑いがある」と報告書は述べている。

中国政府は部外者にウイグル人収容施設の視察を認めていないが、国外に逃れた元収容者の証言から、女性の収容者に対する組織的なレイプなど卑劣な弾圧が懸念されている。

ASPIが挙げたブランドにはアディダス、アマゾン、アップル、BMW、シスコ、デル、GAP、グーグル、H&M、日立、ラコステ、メルセデス・ベンツ、マイクロソフト、ナイキ、任天堂、ノキア、パナソニック、プーマ、サムスン、ソニー、東芝、ユニクロ、フォルクスワーゲンなどが名を連ねている。

こうしたブランドにとって、中国は魅力的な進出先だ。だがそこには落とし穴がある。中国政府に圧力をかけられるリスクとブランドイメージが傷つくリスクだ。

そこで、これらのブランドにごく穏当な提案をしたい。今すぐ中国から出ていくこと。中国にとどまるリスクはメリットを大きく上回る。

撤退すれば、短期的には製品や部品の調達が滞り、収益も減るだろう。だが世界中の消費者がその苦労に報いてくれる。激しさを増す地政学的な競争に巻き込まれ、身動きが取れなくなる悪夢からも解放される。

中国ドイツ商会の調査でも、中国で事業展開しているドイツ企業のうち72%が増資を計画していることが分かっている。その背景にはコロナ禍から早々と立ち直った「独り勝ち」の中国経済への期待がある。

実際、IMFは中国の今年のGDP伸び率を7.9%と予測している。ASPIの報告書が出た数カ月後、BBCの記者がフォルクスワーゲンの中国法人のCEOに取材した。

同社は新疆ウイグル自治区の首府ウルムチに工場があるが、「そこで働く労働者には収容所から連行されたウイグル人はいませんね」と記者に詰め寄られて、CEOは返答に窮した。その様子を見て、消費者は即座に反応し、SNS上で同社の車の不買運動が広がった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ホリデー商戦、オンライン売上高2.1%増に減速へ

ワールド

トランスネフチ、ウクライナのドローン攻撃で石油減産

ワールド

ロシア産エネルギーの段階的撤廃の加速提案へ=フォン

ワールド

カーク氏射殺事件の容疑者を起訴、検察当局 死刑求刑
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがまさかの「お仕置き」!
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 8
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    出来栄えの軍配は? 確執噂のベッカム父子、SNSでの…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中