最新記事

感染症対策

英アストラゼネカ「ワクチンと血栓の因果関係示す証拠なし」

2021年3月15日(月)10時52分

英製薬大手アストラゼネカは3月14日、同社が英オックスフォード大学と開発した新型コロナウイルスワクチンの接種データを検証した結果、血栓との因果関係を示す証拠は見つからなかったと発表した。10日撮影(2021年 ロイター/Dado Ruvic/Illustration)

英製薬大手アストラゼネカは14日、同社が英オックスフォード大学と開発した新型コロナウイルスワクチンの接種データを検証した結果、血栓との因果関係を示す証拠は見つからなかったと発表した。

同社は欧州連合(EU)と英国で同社製ワクチンを接種した1700万人以上のデータを検証。その結果、「どの年齢層、性別、バッチ番号、国についても、肺塞栓症、深部静脈血栓症、血小板減少症のリスクが高まったと示す証拠は見つからなかった」とした。

アイルランド、デンマーク、ノルウェー、アイスランド、オランダの当局は、同ワクチンの接種後に血栓ができる事例が報告されたことを受け、接種を一時中止。オーストリアは接種後に1人が死亡したため、国内接種を一時中断して調査を行っている。

英政府の防疫担当顧問だったピーター・イングリッシュ氏はロイターに対し「各国が『予防的』措置としてワクチン接種を中断したことは極めて遺憾だ。ウイルスの感染拡大を遅らせ、パンデミックを終わらせるのに十分な人数にワクチンを接種するという目標から遠ざかりかねない」と語った。

欧州医薬品庁(EMA)は同ワクチンと血栓の因果関係は示されていないとの見解を示しており、世界保健機関(WHO)もまた、12日に同様の見方を表明した。

アストラゼネカによると、これまでに深部静脈血栓症の事例が15件、肺塞栓症が22件報告されているが、他の使用許可を受けているワクチンと状況はあまり変わらないという。

また、同社と欧州保健当局が追加の試験を行っているが、懸念材料は出ていないとした。

アストラゼネカ製ワクチンはEUや多数の国で使用許可が下りているが、米国ではまだ許可されていない。

同社は今月終盤もしくは4月初旬をめどに、同ワクチンの緊急使用認可を米食品医薬品局(FDA)に申請する用意を進めていると、関係筋が12日明らかにした。

*内容を追加しました。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、シリア南部で政府軍攻撃 ドルーズ派保護

ビジネス

独ZEW景気期待指数、7月は52.7へ上昇 予想上

ビジネス

日産が追浜工場の生産終了へ、湘南への委託も 今後の

ビジネス

リオ・ティント、鉄鉱石部門トップのトロット氏がCE
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 2
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 5
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 6
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 7
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 8
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中