最新記事

韓国

「#ジョンインちゃん、ごめんね」 養父母による虐待死に国民が涙、BTSとARMYも追悼

2021年1月15日(金)19時34分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

13日に行われた初公判では裁判所前に多くの市民が集まり、ジョンインちゃんの養父母へ殺人罪の適用を訴えた。YonhapnewsTV / YouTube

<韓国社会に潜む闇に多くの国民が涙し、追悼の声は世界にも広がった>

昨年末、厚生労働省が発表した「2019年度児童相談所が対応した18歳未満の子どもへの虐待件数」は、19万3780件と過去最多だったという。日本でも度々ニュースとなる子供の虐待問題だが、今韓国では生後16カ月でその小さな命に幕を閉じたジョンインちゃんの死に悲しみの声が寄せられている。

ジョンインちゃんは、2019年6月10日に生まれた。実の両親に事情があり里子へ出され、7カ月間保護施設で暮らした後、里親の元で新しい生活が始まった。

養父は放送局に勤め、養母は翻訳などを仕事にしており、自身も里子として育てられた経験があったという。そのため、既に実子の娘が一人いたが、いつか里子を迎えたいと準備していたという。

第二の人生を里親の元で幸せに暮らしていたと思われていたジョンインちゃんだったが、実際にはその数カ月間は地獄のような暮らしだった。そして無念にも昨年10月13日、虐待により短い一生を終えてしまった。

何ヶ月もの虐待で腹部に血が溜まっていた

亡くなる際に搬送された病院でのCT写真では、膵臓と腸間膜小腸の破損ですでに内臓は血でいっぱいになっていたそうだ。骨にも骨折やヒビが見つかり何カ月にもわたって虐待された跡が残っていた。

ジョンインちゃん死亡の21日後、警察は解剖結果を元に児童虐待容疑で里親を拘束した。この頃から韓国内のニュースなどでも大きく報道され始め、虐待をした里親に世間から非難が降り注いだ。

里親は、ジョンインちゃんが食事を取らなかったことを理由に、「しつけのため抱き上げ、叱っている途中に事故で落としまい、横にあった椅子に腹部をぶつけた」と主張しているが、死亡原因の一つでもある膵臓は奥側にあり、母親の身長から計算しても破裂を起こすまでの損傷には無理がある。

保育園などの通報にも十分な対応取られず

もちろん、ジョンインちゃんの虐待について異常を察知した大人たちもいた。ジョンインちゃんと、長女が預けられていた保育所の先生たちは、度々増えるあざや傷を発見するたびに写真に撮って通報し、その後ジョンインちゃんを診察した小児科の医師も虐待の可能性があるため、里親と引き離すよう指示した。

ところが3度にわたる申告があったにもかかわらず、初めの2度の申告を担当した7人の警察官は里親に注意/警告のみで済まし、3度目の申告を受けた警察官5名にいたってはことの重大さを察知することが出来ず放置していたという。

この不祥事について警察批判が高まり、キム・チャンリョン警察庁長官は6日、会見を開きジョンインちゃんの冥福を祈るとともに国民に対し謝罪する事態となった。

そして、ついに1月13日ソウル南部地裁にて里親に対する初公判が行われた。裁判所には怒りをあらわにした韓国民たちが大勢集まった。なかには「死刑判決を!」というプラカードを持った人びともいたという。傍聴券51席を求める希望者は813名にものぼり、裁判所は急遽、別の法廷を開放しスクリーン中継を行ったという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、FRBが金利据え置き

ビジネス

FRB、5会合連続で金利据え置き トランプ氏任命の

ビジネス

情報BOX:パウエル米FRB議長の会見要旨

ワールド

銅に50%関税、トランプ氏が署名 8月1日発効
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 4
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 5
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 6
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 9
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中