最新記事

医療

新型コロナで閑散とする街のクリニック 経営悪化と医療の質に懸念

2020年5月26日(火)11時21分

山崎利彦氏が院長を務める外科・泌尿器科診療所。5月22日、埼玉県さいたま市で撮影(2020年 ロイタ/Issei Kato)

新型コロナウイルスへの感染を恐れ、街の診療所から患者の足が遠のいている。緊急事態宣言解除後も患者数が元には戻らず、影響が長期化すれば、コストを意識した診療が一般的となり、医療の質の低下を招く懸念が指摘されている。受診回避による疾患見逃し等で健康状態が悪化するリスクも浮上。 病気に向き合う本来の診療が得られなくなる可能性がある。

6月にも危機顕在化か、患者数回復見込めず

「緊急事態宣言が解除となっても、感染リスクを懸念して、当面患者数は元には戻りそうにない」──JR浦和駅からすぐの外科・泌尿器科診療所の山崎利彦院長は、4月の診療収入が2、3月に比べて2割弱減少したという。「駅に近く、当院はまだこの程度の減少で収まっているが、住宅街やオフィス街の診療所はもっと減少している」という。

東京保険医協会の調査によると、都内の診療所1200件以上のうち、4月上旬に診療収入が減少した診療所は9割超となり、30%以上減少した診療所が7割を超えた。50%以上の減少も3割にのぼる。

全国を対象とした2900件の状況では、4月月間を通しての保険診療収入が減少したとの回答が8割超、30%以上の減少は3割以上を占めた(日本保険医団体連合会の調査)。

収入が減っても固定費の割合が高い診療所では、経営的に非常に厳しい状況だという。看護師や事務員、技師などの人件費、さらに機材や賃料などを合わせて平均的な固定費は、もともと収入の5-6割を占める。収入が3-5割減少すればぎりぎりの経営状態となる。

都内のある眼科医の院長は「家賃や光熱費を払うと赤字だ」と打ち明ける。「昨年リフォームしたため借金が増えた。患者の減少により資金繰りに困っているが、公的保障の対象にならない」という内科の開業医も。新宿区のある内科診療所の院長は「閉院も検討中」と漏らす。感染回避行動が本格化して以来、特に小児科、耳鼻科、内視鏡を扱う診療科での患者減少が目立つという。

患者数が大幅減少した4月の診療報酬は6月が支払い月となる。そこで診療所の経営危機が顕在化するとの指摘もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、貿易交渉期限「確定せず」 7月9日前倒

ワールド

暗号資産の犯罪防止へ規制強化呼びかけ、国際監視組織

ワールド

主要18カ国との貿易交渉、9月1日までに完了の見通

ワールド

トランプ氏、カナダとの貿易交渉を即時終了 デジタル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 2
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急所」とは
  • 3
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 4
    富裕層が「流出する国」、中国を抜いた1位は...「金…
  • 5
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    伊藤博文を暗殺した安重根が主人公の『ハルビン』は…
  • 8
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 9
    ロシア人にとっての「最大の敵国」、意外な1位は? …
  • 10
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 4
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 7
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 10
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中