最新記事

新型コロナウイルス

新型コロナウイルス、男性の死亡リスクが高い理由

2020年4月9日(木)18時00分
松丸さとみ

死亡者は男性の方が多く、女性の2倍以上になる国もある...... REUTERS/Fabrizio Bensch

<新型コロナウイルス感染症の死亡者を男女別に見てみると、どうやら男性にとってより危険な病気であることが分かってきた......>

新型コロナでの死亡、男性が倍以上を占める国も

新型コロナウイルス感染症はこれまで、「高齢者」と「基礎疾患がある人」がとりわけ危険だと言われてきた。しかし死亡者を男女別に見てみると、どうやら男性にとってより危険な病気であることが分かってきた。

英ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)ジェンダー・アンド・グローバル・ヘルス・センターのサラ・ホークス所長は、フランスの国際ニュース専門チャンネル「フランス24」に対し、死亡者は男性の方が多く、女性の2倍以上になる国もあると話した。男女別のデータが入手できた国については、どこも男性の方が多い傾向にあるという。

ホークス所長は、グローバル・ヘルスにおける男女平等を推進している独立系団体「グローバル・ヘルス50/50」の共同創設者。同団体は米CNNの協力により、世界中から新型コロナウイルスとジェンダーのデータを集めて分析している。

グローバル・ヘルス50/50のウェブサイトには、各国からのデータを分析した表とグラフが掲載されている。このデータは、毎週火曜日と金曜日にアップデートされているという。

喫煙や飲酒で男性にリスク

例えば中国を見ると、死亡者の男女比は男性64%、女性36%だ。また、欧州でもっとも感染被害が広がっているイタリアでは、男性69%、女性31%と、男性が倍以上になっている。欧州でイタリアに次いで死亡者数が多いスペインでは、男性63%、女性37%だ。なお、日本は死亡者数の男女別データは提供していないようだ。

フランス24は、新型コロナウイルスに感染する可能性としては、男女の差はないとしている。実際に、グローバル・ヘルス50/50の表を見ると、フランスでは感染者の男女比は男性47%、女性53%と女性が若干多い。国によってまちまちではあるが、全体として男女のどちらかに偏っている印象はない。

感染の割合は変わらないのに、致死率は男性の方が高くなる原因について、ホークス所長はフランス24に対し、生物学的な原因もあるとしながらも、喫煙や飲酒をたしなむ人が女性よりも男性に多いことが主な原因だと説明している。

例えば、世界で最も喫煙者の多い中国では、男性の50%が喫煙する一方、女性は3%にとどまる。また、イタリアでは男性の喫煙者700万人に対し、女性の喫煙者は450万人だ。グローバル・ヘルス50/50によると、新型コロナウイルスで陽性になり入院した場合、集中治療や人工呼吸器が必要になるリスクは、喫煙者の場合、非喫煙者の倍以上になるという。

新型コロナウイルスは、高血圧症や循環器系疾患、慢性の肺疾患などの基礎疾患がある人が、より重篤化しやすいと言われている。ホークス所長はCNNに対し、こうした疾患は、世界的に男性の方が多いと説明する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中