最新記事

事故

運行停止した737MAX エチオピア航空遺族には米法律事務所群がる

2019年12月31日(火)09時00分

ロイターが37人の犠牲者遺族・代理人に取材したところ、31人が、米国の法律事務所関係者を名乗る人物による不適切なアプローチへの不満や苦情を訴えた。写真は3月14日、アジスアベバ近郊で撮影(2019年 ロイター/Tiksa Negeri)

3月10日にケニア行きのエチオピア航空ボーイング機が墜落し、乗員乗客157人全員が死亡した事故の後、遺族は、米国の法律事務所関係者を名乗る見知らぬ人物からの電話や訪問を受けるようになった。

彼らは呼ばれもしないのに、涙に暮れる親族を訪ねて葬儀場や自宅に現われた。勧誘の電話をかけ、パンフレットを送りつける。

妻を亡くして哀しみに沈む男性に、会ってくれれば謝礼を出すと言ってきた例もあった。また、法律事務所の仕事をしていることは明かさずにカウンセリングを持ちかけてくるケースや、精神的支援のためのグループを創設しようと言ってくるケースもあった。

ロイターが37人の犠牲者遺族・代理人に取材したところ、そのうち31人が、米国の法律事務所関係者を名乗る人物による不適切なアプローチへの不満や苦情を訴えた。

法曹界の倫理規範に詳しい複数の専門家によれば、いくつかの例で見られた振る舞いは、教唆や欺瞞的な行為を禁じる米国の法令のもとで、違法又は非倫理的とされかねないという。

エチオピア航空墜落事故で特に積極的に動いていた法律事務所は、シカゴのリベック・ロー・チャータード、グローバル・エイビエーション・ロー・グループ(GALG)、テキサスのウィザースプーン・ロー・グループとラムジ・ロー・グループ、ミシシッピのウィーラー&フランクス・ロー・ファームPC、イーブス・ロー・ファームだ。

ロイターの問い合わせに対し、ウィザースプーンとウィーラー、イーブス、ラムジは、何も不正はないと回答。リベックとGALGからは回答を得られなかった。

このうちリベックとGALGは合同で、ボーイング相手に訴訟を2件起こし、具体的な請求の額は示さずに「法に基づいて可能なあらゆる損害賠償」を求めている。ラムジが提起した3件の訴訟は棄却された。その他の法律事務所は1件も訴訟を起こしていない。

シカゴ連邦裁判所では12月19日までに、ボーイングを相手取って事故犠牲者112人を原告とする訴訟が114件起きている。原告側主任弁護人のロバート・クリフォード氏が明らかにした。原告側の代理を務める法律事務所は40社近くに及ぶ。公判の日程はまだ設定されていない。

ボーイングはロイターの問い合わせに対し、「捜査当局に全面的に協力している」とコメント。安全は最優先事項だとした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

貿易収支、11月は予想上回る黒字幅 対米輸出8カ月

ビジネス

日経平均は小幅反発で寄り付く、米雇用統計を通過 短

ワールド

トランプ氏、ベネズエラ出入りの制裁対象タンカー封鎖

ワールド

ザポリージャ原発、2本のうち1本のみの送電線で稼働
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中