最新記事

中国

習近平が言ったとする「(分断勢力の)体はつぶされ骨は粉々に」を検証する

2019年10月15日(火)19時50分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

この歪曲報道の原因の一つはBBCの日本語版報道にあると言っていいだろう。

BBC日本語版は上記の事実を<「体はつぶされ骨は粉々に」と習国家主席が分断勢力に警告 香港でデモ続く>というタイトルで報道している。

ここに二つの問題が潜んでいる。

1. 直訳の二次資料をコピペした日本

BBCは、まず英語で発表されたBBCの報道を、日本語や中国語など各国言語に翻訳して報道する。したがってBBC記者が、たまたまなのか、中国語の「粉身碎骨」という4字熟語を知らなかったために、「体を粉のようにつぶして、骨を粉々になるまで砕いてしまう」と、文字通り「直訳」してしまったのだろう。それをさらに日本語に「直訳」した。

原文に当たらない日本の一部メディアが、二次資料を三次利用して「体はつぶされ骨は粉々に」とコピペした。

2. BBCの位置づけをコピペし増幅させた日本のメディア

BBCの原文のタイトルは"Hong Kong protests: President Xi warns of 'bodies smashed'"となっている。最初から香港デモに関して習近平が'bodies smashed'(体を粉々にしてしまうぞ)と言ったと位置づけている。

そこで10月14日、日本のANNニュース<習近平「打ち砕く」 一方、香港民主派は「女神像」(19/10/14)>は、

──中国の習近平国家主席は13日、香港のデモ隊を念頭に「中国のいかなる地域であれ、分裂活動を行えば誰であろうと粉々に打ち砕かれることになる」と痛烈に批判しました。

と、習近平が頭の中で何を考えているかまで見えてしまっている「読心術」でも持ち合わせているかのような「先見的な」表現で報道するに至っているのである。

ただただ、唖然とするしかない。

それ以外にも<「体を打ち砕かれ骨は粉々に」習近平主席が中国分断を巡り警告>といった、類似の歪曲報道は続く。

「粉身碎骨」の意味

そのような中、日経新聞の<習氏、中国分裂勢力「最後は粉々に」>は非常に良心的だ。北京の特派員・羽田野主氏が書いたようだが、こういう先見性を持たずに原文に忠実に書いている報道を見ると、礼賛したくなる。

「最後は粉々になるだけだ」という表現も、原文の意味に近い。羽田野主記者に敬意を表する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

核保有国の軍拡で世界は新たな脅威の時代に、国際平和

ワールド

米政権、スペースXとの契約見直し トランプ・マスク

ワールド

インド機墜落事故、米当局が現地調査 遺体身元確認作

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、円安で買い優勢 前週末の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中