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「死に体」の香港長官が辞任できない理由 糸を引く中国政府の思惑とは

2019年7月16日(火)12時30分

それでも、一部のアナリストや外交官らは、ラム氏がすでに習近平国家主席のもっと幅広い安全保障政策に痛手を与え、これ以外の安全保障関連の法案を香港で通すことを困難にしたうえ、民主改革を求める市民の声を再び強めることになったと指摘する。

香港の張超雄(フェルナンド・チャン)議員はロイターに対し、ラム氏はいまやレームダック(死に体)であり、任期を全うすることはできないと語る。

張議員は、「市民の批判に対する政府と行政長官の対処を見れば、真の民主主義なしに責任ある統治など望むべくもないことを人々は理解した」と述べた。「一度気づいてしまえば、もう引き返すことはない」

デモ隊が掲げるプラカードには、「ブラッディキャリー」が「香港を売り飛ばした」という文字が並び、ラム長官の支持率は香港返還後の行政長官として最低を記録している。

多くの人にとって、彼女の運命は、返還後最初の行政長官となった董建華氏を思い起こさせる。2003年に国家安全条例に反対する約50万人がデモに繰り出すと、董氏は即座に辞任の意思を示した。

しかし、董氏が実際に辞任できたのはそれから2年後だった。董氏は当時、「去るのは簡単だが、とどまるのはずっと困難だ」と語っている。

Greg Torode and John Ruwitch
(翻訳:宗えりか、編集:久保信博)

[香港 10日 ロイター]


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