最新記事

経済摩擦

EU、米輸入制限に「露骨な干渉で断固対抗」 カナダ・ブラジルも反発

2018年3月2日(金)11時45分

3月1日、欧州連合(EU)は、トランプ米大統領が鉄鋼とアルミニウムに対する輸入制限を発動させる方針を示したことについて、米産業保護に向けた「露骨な干渉」だと批判し、対抗策を数日内に提示すると発表した。写真は批判声明を発表したユンケル欧州委員長。ブリュッセルで2014年5月に撮影(2018年 ロイター/Eric Vidal)

欧州連合(EU)は1日、トランプ米大統領が鉄鋼とアルミニウムに対する輸入制限を発動させる方針を示したことについて、米産業保護に向けた「露骨な干渉」だと批判し、対抗策を数日内に提示すると発表した。

トランプ大統領は1日、鉄鋼輸入品に対し25%、アルミニウム製品には10%の関税を課す方針を来週発表することを明らかにした。

ユンケル欧州委員長は声明で「米産業を保護するための露骨な干渉を意味し、いかなる国家安全保障上の理由でも正当化できない」と批判、「極めて遺憾」と表明した。

そのうえで「不公正な措置で欧州の産業が痛手を受け、多くの雇用がリスクにさらされるのを静観するわけにはいかない。EUはその利益を守るため、同等の措置を用いて断固として対抗する」とした。欧州委員会が世界貿易機関(WTO)ルールに沿った措置を数日内に提示すると説明した。

欧州鉄鋼業界を代表する欧州鉄鋼連盟(Eurofer)のアクセル・エッゲルト事務局長は、米国は輸入割り当てではなく25%の関税を導入することで、通商上の対立を選んだとして批判。

「2017年に500万トンに上ったEUの対米鉄鋼輸出は推定50%以上急減する見通し」だとした。そのうえで、欧州委が対抗策を講じる方針を示したことを歓迎した。

カナダ政府もまた、米鉄鋼・アルミ関税に報復措置を講じる構えだと当局者らが1日、明らかにした。

カナダとメキシコは米国と北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を進めており、今回の関税がカナダとメキシコに適用されるかどうかは不明。

フリーランド外相は「輸入制限がカナダ製鉄鋼・アルミ製品にも課されるならば、カナダは通商上の利益と労働者を保護するために対抗措置を実施する」と表明。いかなる貿易制限も「決して容認できない」と強調した。

フリーランド氏は、カナダは米国製鉄鋼の最大の輸出先で、米国の輸出の半分を占めており、鉄鋼とアルミ産業は結び付きが強いと指摘。カナダは米国への最大のアルミ供給国。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏経常収支、2月は調整後で黒字縮小 貿易黒字

ビジネス

ECB、6月利下げの可能性を「非常に明確」に示唆=

ビジネス

IMFが貸付政策改革、債務交渉中でも危機国支援へ

ワールド

米国務長官が近く訪中へ、「歓迎」と中国外務省
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画って必要なの?

  • 3

    【画像】【動画】ヨルダン王室が人類を救う? 慈悲深くも「勇ましい」空軍のサルマ王女

  • 4

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 5

    パリ五輪は、オリンピックの歴史上最悪の悲劇「1972…

  • 6

    人類史上最速の人口減少国・韓国...状況を好転させる…

  • 7

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 8

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    アメリカ製ドローンはウクライナで役に立たなかった

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 7

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    温泉じゃなく銭湯! 外国人も魅了する銭湯という日本…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中