最新記事

経済制裁

北朝鮮への制裁は無効? 日本と韓国へロシア経由で石炭輸出

2018年1月26日(金)14時25分

1月26日、欧州情報機関の複数の関係筋によると、北朝鮮は昨年8月の国連安全保障理事会の制裁決議で石炭輸出が禁止された後に、ロシアを経由して日本と韓国に石炭を輸出していた。写真はナホトカの港の様子。昨年9月撮影(2018年 ロイター/Katya Golubkova)

欧州情報機関の複数の関係筋によると、北朝鮮は昨年8月の国連安全保障理事会の制裁決議で石炭輸出が禁止された後に、ロシアを経由して日本と韓国に石炭を輸出していた。専門家はこの取引が国連の制裁決議に違反している可能性が高いとみている。

国連安保理は昨年8月5日に採択した制裁決議で、北朝鮮からの石炭輸出を禁止した。同国が核・ミサイル開発に必要とする外貨の獲得手段を断つのが狙いだった。

しかし、関係筋によると、北朝鮮は制裁が決まった後に少なくとも3回にわたり、ロシア東部のナホトカ港やホルムスク港に石炭を輸送。港でいったん荷下ろしした後、別の船に積み替えて韓国や日本に運んだという。

ナホトカ港の管理記録によると、北朝鮮の南浦港から来たパラオ船籍の船舶が昨年8月3日に到着し、石炭1万7415トンが陸揚げされた。この船は同月18日に出港した。

8月16日には同じ停泊場所に別の船が到着し、石炭2万0500トンを積み込んだ後、24日に韓国のウルサン港に向かったと記録されている。

サハリン州のホルムスク港の管理記録によると、この港では昨年8月と9月に少なくとも北朝鮮船籍の船舶2隻が同国から到着し、石炭を荷下ろしした。このうち1隻は8月1日─9月12日の間に3回ホルムスク港に寄り、合計1万5542トンの石炭を運んだ。もう1隻は8月3日と9月上旬に2度寄港し、合計1万0068トンの石炭を運んだ。

国連の制裁決議後だったため、これらの石炭はロシアの税関を通過しなかったが、その後に中国系の船舶に積み込まれた。ロイターが入手した港湾管理記録には、これらの船の行き先は北朝鮮と記されていた。しかし、船舶追跡情報を見ると、実際には韓国の浦項港と仁川港に向かっていた。

欧州の関係筋は、中国が北朝鮮からの石炭輸出の取り締まりを強化したため、ロシア経由の密輸ルートが生まれたと指摘する。

これとは別に、ある海運関係者は、北朝鮮から輸出された石炭の一部が昨年10月に日本と韓国に到着したと語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、銀行に影響する予算措置巡りイタリアを批判

ビジネス

英失業率、8─10月は5.1%へ上昇 賃金の伸び鈍

ビジネス

三菱UFJFG社長に半沢氏が昇格、銀行頭取は大沢氏

ワールド

25年度補正予算が成立=参院本会議
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中