最新記事

北方領土

千島列島を軍事要塞化?ロシアが新たに海軍基地を建設

2017年10月27日(金)14時30分
ダミアン・シャルコフ

ロシア軍は北方領土にも軍事施設を建設している(写真は2015年8月に択捉島を視察したメドベージェフ首相) RIA Novosti-REUTERS

<千島列島でロシア海軍の基地建設計画が進んでいる。アジア太平洋地域の情勢緊迫化に対応して、ロシアのプレゼンスを高めるためだ>

日本が返還を求めている北方領土を含む千島列島(ロシア語でクリル諸島)で、ロシア海軍が新たに基地建設の計画を進めていることが明らかになった。

ロシア上院国防委員会のフランツ・クリンツェビッチ副委員長は今週26日、ロシアのインタファクス通信に「(建設は)決定事項だ。実現化のステージにある」と語った。さらに今後は基地の構造に関する「組織上の問題」が残っていることも語った。

千島列島はロシア東部のカムチャツカ半島から日本の北海道東部沿岸まで連なる島々。その南端の四島(択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島)はロシアが実効支配しているが、日本が返還を求めている北方領土だ。

クリンツェビッチは、北方領土に関して日本とロシアの交渉が行き詰まっていることを考慮し、千島列島のどの島で基地が建設されるかという重要な点は明言しなかった。

北方領土は第2次大戦の末期、日本がポツダム宣言を受諾した後に旧ソ連の赤軍によって占拠された。住民は即座に退去させられ、日本の返還要求にもかかわらず現在までロシアの実効支配が続いている。

このため日本とロシアはいまだに平和条約を締結していないが、プーチン大統領と安倍晋三首相はともに条約締結に向けて交渉を進める意欲を示している。

国後、択捉にも軍事施設

両国間では表向き友好的に交渉が続いているようだが、その実ロシアは千島列島での軍事力を誇示している。今年8月にも千島列島で2500人規模の兵力が参加する軍事演習が実施されたが、将来はこれと同規模の部隊が駐留するものと見られている。

ロシア国防省は昨年、同省運営のテレビ放送「ズベズダ」を通じ、千島列島中部のマトゥア島で港湾施設を改修するほか、使われなくなった滑走路の再整備など軍事インフラを強化する可能性を探っていることを明らかにした。

またショイグ国防相は2015年、ロシア軍が「択捉島と国後島で軍事施設の建設を活発に行っている」と語った。しかしロシア海軍の太平洋地域の拠点は依然としてロシア本土のウラジオストクに残されている。

近年、北朝鮮の核開発危機や中国の南シナ海進出をめぐる周辺国との緊張が高まる中で、ロシアも太平洋沿岸国としてアジア情勢に関与する姿勢を打ち出しつつある。

今月ロシアはインドとの陸海空の3軍合同演習「インドラ2017」を初めて実施したほか、ロシア海軍の対潜駆逐艦2隻を4カ月間の太平洋の航海演習に派遣して、アジア地域での軍事力を誇示している。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

〔兜町ウオッチャー〕日本株「底打ち」サイン、一部デ

ビジネス

ライブ・ネーション、独占禁止訴訟で和解報道 チケッ

ワールド

ヒズボラ、レバノン東部でイスラエル空挺作戦に応戦と

ビジネス

株安で押し目狙い、アジアの個人投資家 エネルギーシ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ダイヤモンドのような「ふくらはぎ」を鍛える最短ルートとは?...スクワットの真実
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 5
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 6
    「溶けた金属のよう...」 ヨセミテ国立公園で「激レ…
  • 7
    大江千里が語るコロナ後のニューヨーク、生と死がリ…
  • 8
    なぜ脳は、日本的「美」に反応する? 欧米の美とは異…
  • 9
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 10
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 5
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 6
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 7
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 10
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中