最新記事

軍事技術

無人の対潜ドローン艦、レーダー搭載パラセールの実験に成功

2016年10月26日(水)18時10分
高森郁哉

 米国防総省の研究機関である国防高等研究計画局(DARPA)は10月24日、人が操縦せずに数カ月間航行可能な無人船に、レーダー装置を搭載したパラセールを組み合わせたシステムが、海上での哨戒活動を想定した実証実験に成功したと発表した。将来的に、潜水艦の追跡や対機雷活動のミッションに使用される可能性があるという。

レーダーなどを搭載できるパラセール「TALONS」

 主要な2つの研究開発のうちの1つは、「Towed Airborne Lift of Naval Systems(TALONS:海上から曳航される空輸システム)」と呼ばれる、パラセールにレーダーなどの機器を積載する装置だ。TALONSには、情報収集用や通信用の機器を約70キログラムまで搭載できる。


 このパラセールを、海上の船からケーブルにつないで高度150〜450メートルの上空に揚げることで、船上から使用するよりも機器の性能を高められる。具体的には、海面航跡レーダーの範囲が6倍、電気光学・赤外線スキャナーの識別範囲が2倍、民生用の携帯型全方向無線の通信範囲が3倍以上、それぞれ向上したという。

【参考記事】ドローンの次は、殺人ロボット

ACTUV:対潜水艦戦のための継続追跡無人船

 核となるもう1つの技術は、「Anti-Submarine Warfare Continuous Trail Unmanned Vessel(ACTUV:対潜水艦戦のための継続追跡無人船)」と呼ばれる。ACTUVの開発はTALONSに先行しており、最新の実験艇は今年4月の命名式で「シー・ハンター」と名付けられた。


 国防総省のニュースリリースによると、シー・ハンターは全長約40メートルの三胴船で、主船体の両脇に安定性を高めるアウトリガーを備える。巡航速度12ノット(時速22km)で約1万9000kmを航行可能だ。

 実験艇1隻の建造費は2300万ドル(約24億円)で、1日あたりの運用コストは1万5000〜2万ドル(160〜210万円)になるとみられる。これに対し、有人のヘリコプター1機を24時間運用すると60万ドル、駆逐艦1隻も1日で70万ドルかかるため、運用コストの大幅な削減が見込めるとしている。

2018年にも海軍へ移管

 DARPAは現在、この開発プログラムを米海軍の研究部門と共同で進めている。今後2年かけてACTUVとTALONSのテストを重ね、早ければ2018年にも同プログラムを海軍に移管する計画だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

感謝祭当日オンライン売上高約64億ドル、AI活用急

ワールド

ドイツ首相、ガソリン車などの販売禁止の緩和を要請 

ワールド

米印貿易協定「合意に近い」、インド高官が年内締結に

ワールド

ロシア、ワッツアップの全面遮断警告 法律順守しなけ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 8
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 9
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 10
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中