最新記事

教育

中国人留学生8000人が米大学を退学に?

大学経営のためリッチな外国人を積極的に勧誘した結果、学力のほうは疎かに

2015年6月2日(火)17時35分
マックス・カトナー

質が犠牲に アメリカへの留学生の3分の1は中国人 STRINGER-REUTERS

 アメリカの大学が退学処分にした中国人留学生は過去3年間で数千人にのぼることがわかった。中国人留学生に高等教育サービスを提供する米ホールレンエデュケーションが発表した最新のレポートで明らかになった。

 5月に発表された同レポートによると、アメリカの大学は2012〜2013学年度以降、「不正行為や成績不振」を主たる理由に、1657人にのぼる中国人留学生を除籍している。

 だがこれは氷山の一角で、実数は8000人にのぼるかもしれないと、ホールレンエデュケーションのアンドリュー・チェン最高開発責任者(CDO)は言う。「留学生の多くは口を閉ざすか、本国に帰ってしまうことが多い」ため、実態の把握は難しいという。

 同レポートは、中国教育部の数字を引用しながら、50万人近くの中国人が海外で勉強していると報告。また米国際教育協会(IIE)によれば、アメリカが2013〜2014学年度に受け入れた留学生は88万6052人にのぼるが、その31%が中国からの留学生だった。

 中国からの留学生が増えるのは不思議ではない、「一部には、中国人留学生の募集に非常に積極的な大学がある」とチェンは言う。「しかし、中国人留学生をどう管理し、学業に専念させればいいのかという点に関しては、それほど積極的ではないと言わざるをえない」

留学生が払った学費で優秀なアメリカ人に奨学金を

 アメリカの大学が、中国をはじめとする外国からの学生を欲しがるのには理由がある。留学生にはアメリカ国内の学生ローンを受ける資格がないため、多くが授業料全額を自己負担で支払うからだ、と高等教育の専門家たちは言う。

「当初は、人種や国籍などの背景が多様性に富んだクラスをつくることが目的だった」と、ミシガン大学の高等・中等後教育研究センター所長マイケル・バステードは大学側の取り組みについてこう話す。「当時の留学生の多くは非常に優秀だった。だが一方で、経営上の課題が浮上した。赤字を避けたい多くの大学にとって、授業料を全額前納することを厭わない国々の学生を増やすのは経営戦略の一環だった」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中