最新記事

エアライン

パソコン一台で航空機を乗っ取り?

コックピットと客席が通信網を共有している新型機には脆弱性が

2015年5月13日(水)18時42分
ローレン・ウォーカー

対応が急務 連邦航空局(FAA)は今秋にも対策案を出す予定 Athit Perawongmetha-REUTERS

 数百台の民間航空機は、ハッカーに乗っ取られかねない脆弱性がある──先週発表された米政府監査院(GAO)の報告書にはこう記されていた。脆弱性の理由は、コックピットと一般乗客がWi-Fi接続用の通信網を共有していることだ。

 ノートパソコン1台で航空機の電子航行システムをハッキングでき、特に攻撃を受けやすいのはボーイング787やエアバスA350、A380などの最新機種。旧型機はコックピットと乗客用の通信網が分かれており、危険が少ないという。

 ハッカーはこの脆弱性を突くことで航空機を乗っ取れる上、航行制御システムをウイルス感染させたり、警告システムやナビゲーションシステムを掌握することが可能だという。

 GAOの報告書は、ハッキングの具体的手法は紹介していない。だがセキュリティー専門家のルーベン・サンタマータは、そうした攻撃の中には実現可能なものがあると認める。彼によれば、ハッキングの成否はそれぞれの航空機のシステム構成次第だ。なかでも、特定のハードウエアとソフトウエアの有無が大きく関わるという。

 仮に機内のWi-Fi通信網が分離されても、ハッキングの危険から逃れられるわけではない。最大の懸念は、航空機と外部をデジタル接続で結ぶSATCOM(衛星通信機器)。航空機と地上の交信や、乗客のネット接続を可能にするものだ。「乗客と航空電子機器をつなぐ経路がある限り、ハッキングのリスクは排除できない」と、サンタマータは言う。

 もちろん航空電子機器はファイアウォールで保護されている。しかしファイアウォールもソフトウエアである以上、ハッキングの可能性は残る。

 連邦航空局(FAA)は、サイバーセキュリティー強化の取り組みを本格化させている。GAOの報告書によれば「対策案を今年9月までに完成させる」ということだ。

[2015年4月28日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「人生で最高の栄誉の一つ」、異例の2度目

ワールド

ブラジル中銀が金利据え置き、2会合連続 長期据え置

ビジネス

FRB議長、「第3の使命」長期金利安定化は間接的に

ワールド

アルゼンチンGDP、第2四半期は6.3%増
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中