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IQじゃない。習い事で伸ばすべきは「非認知能力」

2020年11月24日(火)18時10分
船津徹

metamorworks-iStock

<2000年にノーベル経済学賞に輝いたアメリカの研究者ジェームズ・ヘックマン博士によって注目されるようになった「子ども時代の非認知能力」。IQだけで測定できない知能を伸ばすために、やった方が良いこと・ダメなこと。>

子どもが4〜5歳になると多くの家庭が「習い事」を考え始めます。そもそも子どもに習い事をさせる「目的」は何なのでしょうか?「周りの子どもがみんなやっているから」「親がやらせたいから」という他人本意の理由で習い事に参加させても長続きしないことが多いのは周知のことです。

習い事の目的は「非認知能力の育成」

私の学習塾に通う保護者に聞き取り調査をした所「子どもの可能性を広げるため」という声が一番多く聞かれました。しかし、スポーツ、音楽、演劇、アートなど、数ある習い事の全てを経験させることは不可能です。また、色々な分野を経験させたいからと、次々に習い事を変える(やめさせる)ことは、子どもにとって「失敗体験」になり本末転倒です。

私は、習い事の目的は「非認知能力の育成」であると考えています。非認知能力というのは、チャレンジ精神、協調性、粘り強さ、自制心、コミュニケーション力など、知識や技能を習得したり、物事を成し遂げたり、良い人間関係を形成するために不可欠な力の総称で「心の知能指数(EQ)」や「ソフトスキル」とも呼ばれます。

非認知能力が注目されてきた背景に、2000年にノーベル経済学賞を受賞したアメリカの研究者ジェームズ・ヘックマン博士の研究があります。これは子ども時代に身につけた非認知能力の高さが、将来の学歴、キャリア形成、経済的な安定度に関係することを明らかにしたものです。

知能(IQ)と非認知能力は車の両輪のような関係です。どちらかに偏っていると車はまっすぐに進むことができません。両方をバランスよく育てることができれば、子どもは学力と人間力を兼ね備えたたくましい人材へと成長していきます。

非認知能力は一人で机に向かって勉強しているだけでは身につきません。集団の中で周囲の人と力を合わせたり、競争したり、失敗したり、困難を乗り越えたり、共通のゴールに向かって努力を継続する経験が必要です。これを実現するにはスポーツを始めとする「集団の習い事」に参加するのが一番なのです。

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