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米中テック戦争の新局面...中国が「国産半導体」で追いつく日

BEIJING BYTES BACK

2026年1月19日(月)11時00分
マシュー・トステビン (本誌米国版シニアエディター)
Axel Richter-Unsplash

Axel Richter-Unsplash

<アメリカが最先端半導体の対中輸出規制を強めるほど、中国企業は国産代替品の開発を加速させている。iFLYTEKをはじめとするAI企業は、NVIDIA製チップに依存しない体制を整えつつあり、米国の「封じ込め策」が想定外の副作用を生んでいる可能性がある>


▼目次
国外から高度人材を「輸入」
アメリカよりヨーロッパ?

中国のAI開発企業iFLYTEK(科大訊飛)は、チャットGPTに匹敵する大規模言語モデル(LLM)をトレーニングするためにアメリカのNVIDIA(エヌビディア)製半導体を使いたいと考えていた。だが、今は同社の半導体がなくても問題ないという。

代替案の検討が始まったのは、ドナルド・トランプ米大統領の1期目の任期中だった2019年。iFLYTEKが米商務省のブラックリストに登録されたのがきっかけだ。理由は、新疆ウイグル自治区でハイテク監視技術を使ったイスラム教徒への弾圧に関与したと認定されたことだった(中国側はこの主張を否定)。

3年前には、最先端AI向け半導体の中国への輸出制限がさらに強化された。背景には、アメリカにとって戦略上の最大のライバルである中国の技術革新に対する国家安全保障上の懸念があった。

「私たちはその困難を克服した」と、iFLYTEKのAI翻訳ソフトウエア部門責任者チェン・チョンは本誌を含む外国人記者団に語った。中国外務省が主催した安徽省合肥などの長江デルタ地域の産業拠点への視察旅行でのひとコマだ。

米国の半導体規制に反撃する中国のAI企業──筆者による取材レポート映像

独自の先端半導体製造産業を育て、エヌビディア製半導体に代わる国産品を開発してきた中国企業の軌跡は、ビジネス・技術分野におけるアメリカの対中封じ込め策が直面する課題を浮き彫りにしている。焦点は世界のAI覇権をめぐる競争だけではない。電気自動車(EV)やバッテリーから太陽光発電ドローン(無人機)まであらゆる分野で、中国の躍進が米中間の戦略的均衡とグローバルなビジネス競争に影響を及ぼすことは明らかだ。

「封じ込め策が実際には中国に新たな活力を与え、輸入や外国の技術に頼らずにあらゆる目標を追求し続けられることを証明する機会になった──そう言える分野は数多く存在する」と、英オックスフォード大学中国センターのジョージ・マグナス研究員は本誌に語った。

「アメリカは『中国に最高の技術や製品を売っているわけではない』と安心しているかもしれない。だが、それで中国の競争力をそげるとは限らない」

企業訪問のために高速鉄道で長江デルタを巡った4日間は、中国の技術開発を担う同地域の急速な変化を垣間見る機会となった。この地域の省だけで、経済規模はGDP世界3位のドイツに匹敵し、人口はアメリカの3分の2以上に相当する約2億4000万に達する(本誌は先端技術の輸出制限の有効性についてホワイトハウスにコメントを求めたが、返答は得られなかった)。

iFLYTEKはチャットGPTや中国産のディープシーク(長江デルタの浙江省杭州で開発)に代わる選択肢として、自前のLLM「SPARK(訊飛星火)」を披露した。このLLMは質問に流暢に答え、印象的なグラフィックのプレゼンテーションを生成する(中国当局が許容すると判断したテーマに関しては)。

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