最新記事

仮想通貨ウォーズ

仮想通貨はバブル崩壊後、これだけ変わった──価格、信用力、規制

THE CRYPTO WORLD, SINCE 2017

2019年12月5日(木)12時05分
藤田岳人(本誌記者)

magSR191204_crypto3.jpg

12月10日号「仮想通貨ウォーズ」特集27ページより

──では一般的な興味を持たれやすいビットコインの価格の変動について、最近の動きを解説してほしい。

今年の動きを振り返ると、2月には40万円を切っていたが6月に急騰して一時的に140万円を超えた。その後に少し下がって現在は80万~100万円ほどだ。なぜこのように変化しているかは分からない。だが分からないながらも、完全に無秩序に動いているわけではない。

例えば大きかったニュースはリブラとデジタル人民元で、両方ともビットコインには好材料だった。仮想通貨は巨大企業や国家が本気で発行を目指すほど将来性があるのだと、世の中に伝わったからだ。また投資機関が私的年金の運用などにビットコインを組み入れる動きも起きている。彼らは定期的に買い続けるので、需要を下支えする効果がある。

──現在の価格をどうみるべきか。

2017年末のような熱狂的なバブルは終わった。今は、マーケットは冷静になっている。その分、今の80万~100万円という価格は手堅いと考えることもできる。加えてリブラとデジタル人民元のおかげで、仮想通貨の存在感は上がっている。

──今後、価格に影響を与えそうな出来事には何があるか。

来年5月には、ビットコインのマイニングに成功した者に支払われる報酬の額が半分になる「半減期」がある。過去の半減期を見ると、その直前には価格が上がる傾向がある。

仮想通貨は秩序がないように見えて、実は「お約束」にはそれなりに忠実だ。例えば取引所が、ある通貨の取り扱いを始めるというニュースがあると、その通貨の価格は上がる可能性が高い。当たり前のことではあるが、海外の取引所の使い方などの前提知識と、そうしたお約束が分かっていれば、現在の低金利時代に投資で利益を得ることも可能だろう。もちろん、予期せぬ暴落というリスクは常にあるのだが。

──こうした状況の変化についていくには、どうすればよいのか。

今もどんどん状況は変わっており、ついていくのは大変だ。そういう時代に、実はクラシカルな学問が有効だと思う。伝統的な貨幣論は仮想通貨の理解に役立つ。ビットコインが登場したときに世の中は法定通貨でないことに驚いていたが、歴史家は国が発行しない通貨が昔から多く存在してきたことを知っていた。

<本誌2019年12月10日号 「仮想通貨ウォーズ」特集より>

【参考記事】中国がデジタル人民元を発行する日は近い
【参考記事】決済の本丸を目指すフェイスブックの仮想通貨「リブラ」

20191210issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月10日号(12月3日発売)は「仮想通貨ウォーズ」特集。ビットコイン、リブラ、デジタル人民元......三つ巴の覇権争いを制するのは誰か? 仮想通貨バブルの崩壊後その信用力や規制がどう変わったかを探り、経済の未来を決する頂上決戦の行方を占う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中