公開50年を迎えた『大統領の陰謀』が今なお輝く理由
Still Great at 50
映画『大統領の陰謀』でニクソン政権を追い詰めるワシントン・ポスト編集室の面々 PHOTONONSTOP/AFLO
<調査報道が権力の監視役を果たした時代を鮮烈に描くこの名作をトランプ時代の今、見直す意味>
▼目次
2人の記者の絆と情熱
スリリングな電話の場面
正義の砦を誰が守るのか
ご記憶だろうか、85年前の傑作映画『市民ケーン』にこんなシーンがあった。
製作・監督を兼ねるオーソン・ウェルズの演じる富豪チャールズ・ケーンに、かつての後見人で今は財務顧問のサッチャーが、あなたの所有するニューヨーク・インクワイアラー紙は「1年に100万ドルも」の赤字を垂れ流していると苦言を呈するシーンだ。
するとケーンは、きっぱり言い返す。「おっしゃるとおり、確かに昨年は100万ドルの赤字でした。今年もそう、来年も100万ドルの赤字でしょう。ですが、サッチャーさん、年に赤字100万ドルのペースでも、この新聞がつぶれるまでに」と、ここで一息入れてケーンは続けた。「あと60年はありますよ」
この名ぜりふから70年以上たった2013年、アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスがワシントン・ポスト紙を買収。その4年後、彼は資産総額1000億ドル超で世界一の富豪となった。現在は順位こそ4位に落ちたが、資産総額は当時の倍以上に増えている。にもかかわらず、ベゾスは2月初めに同紙の従業員の3分の1に解雇を通告した。
国家や大企業の横暴を監視する大切なメディアを骨抜きにする暴挙だ。そしてそれはアマゾンが大金を投じたトランプ家のプロパガンダ映画『メラニア』の公開時期と重なり、トランプ政権の国防長官がベゾスの宇宙企業ブルーオリジンのロケット工場を視察して同社との蜜月をアピールした時期とも重なる。『市民ケーン』に負けず劣らぬ50年前の名作映画のせりふを借りるなら、さあ「この金の流れを追え」である。
周知のとおり、これは『大統領の陰謀』(1976年)で匿名の情報提供者がワシントン・ポストの記者ボブ・ウッドワードに告げた言葉だ。
ウッドワードと若き相棒カール・バーンスタインは、徹底した取材で米国史上最大の政治スキャンダル「ウォーターゲート事件」の背景を暴き、時の大統領リチャード・ニクソンを辞任に追い込んだ。そして2人の名は調査報道の代名詞となった。いま見るといろいろな意味で懐かしい映画だが、一番大切にしたい想いを言葉にすれば「調査報道を再び偉大に」だ。
この作品を監督したのは名匠アラン・J・パクラだが、原作に影響を与えた人物が別にいる。後にボブ・ウッドワード役を務めたロバート・レッドフォードだ。





