最新記事
中国経済

中国の個人消費低迷...政府の刺激策に反応せず、債務返済・資産運用を優先

2024年7月19日(金)09時20分
北京

18日、中国では家計の預金残高の伸びが鈍化し銀行が金利を引き下げているにもかかわらず、個人消費は政府の刺激策に反応していない。リスクを回避し債務の返済や資産運用を優先していることがうかがえる。北京で14日撮影(2024年 ロイター/Tingshu Wang)

中国では家計の預金残高の伸びが鈍化し銀行が金利を引き下げているにもかかわらず、個人消費は政府の刺激策に反応していない。リスクを回避し債務の返済や資産運用を優先していることがうかがえる。

中国人民銀行(中央銀行)のデータによると、家計の新規預金は6月に2兆1400億元増えるなど上半期に9兆2700億元(1兆3000億ドル増加したが、前年比では22%減少した。


 

6月の家計の人民元建て預金残高は前年比10.6%増加したが、少なくとも過去3年間で最低に近い水準にとどまった。

中国では銀行への預金が鈍っているが、今週発表されたデータでは、これが消費の増加にはつながっていないことが示された。

6月の小売売上高は前年同月比2%増と予想を下回り、1年半ぶりの低い伸びとなった。デフレ圧力により企業が値下げを余儀なくされたためだ。

政府の消費刺激策が十分な効果を上げていないことを示しているとアナリストは指摘する。

OCBC銀行の中国圏調査部門責任者トミー・シー氏はメモで、貯蓄の伸びは鈍化しているが、消費の増加にはつながっていないとし、「これは家計がローンを早期に返済して負債を減らし、預金を資産運用商品に振り向けていることと関係しているかもしれない」と分析した。

預金金利の引き下げは消費と借り入れの促進が狙いだが、家計や企業は貯蓄を資産運用に回し、資産運用会社は資金を債券に振り向けている。

アナリストによると、不動産価格の下落や雇用不安、高債務などが重なり、家計が慎重姿勢を強めていることが個人消費低迷の背景にある。

中国の第2・四半期の成長率は4.7%と予想を下回り、第1・四半期の5.3%から鈍化した。

預金の伸びの鈍化は銀行融資とほぼ一致しており、先週発表された6月の融資残高は、需要が再び低迷していることを示している。

中国の預金残高は長期的には依然として成長の原動力となり得るが、対外貿易が抑制される中、過剰生産能力のリスクを踏まえると、政府は消費者への支援を強化すべきとの声が聞かれる。

6月末の家計の人民元預金は過去最高の146兆3000億元となった。家計、企業、政府の預金を合わせた6月の人民元預金総額は295兆7000億元に達し、中国本土の株式市場の時価総額73兆元や国内総生産(GDP)126兆元を大きく上回った。

メイバンクのアナリストはメモで「政策当局は一時的な刺激策ではなく、消費者のリスク回避行動の根本原因に対処し、消費を促す必要がある」と指摘。「そのためには長期にわたる不動産市場の低迷、不安定な雇用市場、不十分な社会保障、債務負担の増加といった根本的な問題を解決するための構造的な措置が求められる」と提言した。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米、スリーマイル島原発再稼働へコンステレーションに

ビジネス

ネクスペリア半導体供給問題、独自動車部品サプライヤ

ワールド

米航空業界、政府閉鎖中の航空管制官への給与支払いを

ビジネス

欧州金融業界向け重要通信技術提供者、EUがAWSな
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中