最新記事

ブレグジット

イギリス、「移民頼み経済」から25年ぶり転換か EU離脱で試練の冬

2021年10月7日(木)17時00分
ロンドンの繁華街

英国は過去25年間、移民労働者頼みの経済モデルを続けてきた。それを欧州連合(EU)離脱とコロナ禍が覆そうとしている。ロンドンで2020年12月撮影(2021年 ロイター/Simon Dawson)

英国は過去25年間、移民労働者頼みの経済モデルを続けてきた。それを欧州連合(EU)離脱とコロナ禍が覆そうとしている。人手不足、賃上げ要求、物価上昇の三拍子がそろい、1970年代型の「不満の冬」がしのび寄っているのだ。

英国は突如として、外国から輸入した安い労働力への「中毒」を断ち切らざるを得なくなった。

経済モデルの転換というジョンソン首相の「実験」によって、ただでさえ世界中でひっ迫している供給網への負荷は、さらに拡大。豚肉から鶏肉、医薬品から牛乳まで、あらゆるものに影響が及んだ。

いきおい賃金は上がり、物価にも跳ね返るはずだ。

この状況が英国の経済成長、ジョンソン氏の政治的命運、そして英国とEUとの関係に及ぼす長期的な影響は定かでない。

人手不足について問われたジョンソン首相は「野放図な移民受け入れに支えられた低賃金と低い職能という、破綻した古いモデルに戻ることはしない」と述べた。

英国民はブレグジットの是非を問う2016年の国民投票と、ジョンソン氏の保守党が地滑り的勝利を収めた2019年の総選挙で、「変化」に票を投じたのだと同氏は言う。

国民投票の結果が示す通り、低迷している一部労働者の賃金を引き上げなければならないとジョンソン氏は指摘。非公開の会議で財界指導者らに対し、労働者の賃金を引き上げよ、ときっぱり言い渡した。

2016年の国民投票では、ジョンソン氏が率いた「離脱」派が辛勝。この時の中心的メッセージが「(移民への)コントロールを取り戻す」だった。同氏は、後にEUという「雇用破壊装置」から英国を守るとぶち上げた。

ブレグジットは「調整」か

ブレグジットという賭けを、ジョンソンは「調整」として描いてみせる。しかし、労働者不足という実態を賃上げのチャンスのように粉飾しているだけだ、というのが離脱反対派の主張だ。

移民流入制限は、英国の経済政策が約25年ぶりに転換することを意味する。

1989年のベルリンの壁崩壊以降、EUは東側に拡大し、英国その他の欧州主要国は、東欧諸国から何百万人もの移民を受け入れた。そうした国の1つであるポーランドは2004年にEUに加盟した。

流入した移民の数は、把握されていない。英国政府は今年半ば、EU諸国の国籍を持つ住民からの永住申請が600万件を超えたと発表したが、これは2016年に英国が認識していた移民数の2倍以上だ。

ブレグジットを機に、トラック運転手約2万5000人を含む大勢の東欧移民労働者が出国。折しもパンデミックにより約4万件のトラック運転免許試験が中止される事態が重なった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

不明兵捜索、時間との戦い イランの猛攻耐えた米軍救

ワールド

トランプ氏、イランに合意期限「6日」 米戦闘機乗員

ワールド

米、イランで不明の戦闘機乗員救出 トランプ氏「史上

ワールド

イラク南部の巨大油田に攻撃、3人負傷 イラン国境に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 2
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙の2大テーマでAI懸念を払拭できるか
  • 3
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「攻撃的知能」を解剖する
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 7
    地面にくねくねと伸びる「奇妙な筋」の正体は? 飛行…
  • 8
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 9
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 10
    イタリアに安定をもたらしたメローニが国民投票で敗…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 5
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 6
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 7
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 8
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 9
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 10
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中