コラム

野党の「桜を見る会」追及にはなぜ迫力がないのか

2019年11月19日(火)18時00分

首相主催の「桜を見る会」の趣旨については確かに疑念を抱かざるを得ないが Kim Kyung Hoon-REUTERS

<首相のスキャンダルを追及しても、一度染みついた「政権担当能力」への不信は拭えない――野党勢力が最低でも打ち出すべき8つの対案>

安倍首相周辺の「桜を見る会」および「前夜祭」の問題は、そう簡単には説明が付かないようです。と言うことは、安倍首相としては相当な政治的失点となり、常識的に考えれば極めて腰を低くした政治姿勢が求められるでしょう。

野党は追及姿勢を強める中で、例えば立憲民主党の枝野代表などは「解散に追い込む」などと意気込んでいます。ところが、実際に解散となれば現時点では与党が勝利する可能性が強いわけです。その場合に、勝敗ラインを下げてでも勝利すれば、一連の問題に関する「民意の洗礼」が済んだということになるでしょう。

このような現在の情勢を受けて、野党の追及姿勢にはどこか腰の引けた印象を受けます。その一方で、解散になれば負けるかもしれないが、桜問題の追及でメディア露出が増えれば、少なくとも自分の議席は守れるだろう......一部の政治家にはそんな姿勢も見え隠れします。

どうしてスキャンダルを契機に勢いに乗れないのか――それは野党、とりわけ旧民主党系の政党には「政権担当能力がない」というイメージが染み付いてしまっているからです。そのイメージは下野していた時の自民党が派手にネガキャンをやった結果であり、実際よりも過剰に悪いイメージになっているのも事実でしょう。ですが、そんな愚痴を言っても支持は回復しません。

では、野党はどうしたら「政権担当能力」をアピールできるのかと言えば、2019年末の現在、喫緊の課題として突き付けられている以下の問題について、明快な方針を持つ、これが最低条件だと思います。

(1)河野防衛相はとりあえず否定しているが、仮に米軍駐留費の4.5倍増という要求が事実であるならば、政権党としてどう対処するのか?

(2)日韓関係をどう修復するのか、とりわけ日本国内における韓国への不信感を修復するうえでの具体的な道筋をどうするか?

(3)反対に、韓国が北朝鮮にさらに接近して、安全保障上の同盟関係が弱体化する場合には、日本の安全保障をどう転換するのか? あるいは現状維持で構わないとして世論をどう説得するのか?

(4)米国、そして世界の景気が大きく暗転した場合、日本の景気も大きく影響を受けるが、その場合にどんな経済政策を打ち出すのか?

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ドイツ輸出、5月は予想以上の減少 米国向けが2カ月

ビジネス

旧村上ファンド系、フジ・メディアHD株を買い増し 

ワールド

赤沢再生相、米商務長官と電話協議 「自動車合意なけ

ビジネス

日経平均は反発、対日関税巡り最悪シナリオ回避で安心
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 5
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    米テキサス州洪水「大規模災害宣言」...被害の陰に「…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 10
    中国は台湾侵攻でロシアと連携する。習の一声でプー…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story