コラム

クリミア軍用空港「攻撃成功」の真相──これで「戦局」は完全に逆転した

2022年08月13日(土)13時30分

7月31日
ウクライナ本土から約170キロメートル離れたクリミア半島セバストポリ市にあるロシア黒海艦隊司令部が改造ドローンによって攻撃され、6人が負傷。ロシアの海軍記念日に予定されていた祭典が中止に追い込まれる。

8月9日
ロシアが占領するクリミア半島のサキ軍用空港で複数の爆発が起き、1人が死亡、14人が負傷。ロシア空軍の戦闘機9機以上を破損・破壊した。ロシア空軍がウクライナを空爆する出撃拠点だった。前線から最短でも200キロメートル以上離れており、ハイマースから地対地ミサイル「MGM-140 ATACMS(エイタクムス、射程300キロメートル)」が発射された可能性が取り沙汰される。

8月10日
ウクライナ軍がヘルソン州でドニプロ川のカホフカ橋を攻撃し、通行不能にする。

8月11日
ベラルーシの2つのテレグラムチャンネルが、ウクライナの国境から約30キロメートル離れたベラルーシ南東部ホメリのジャブラウカ軍用空港近くで夜、少なくとも8回の爆発音が聞こえ、閃光が見えたと伝える。この空港もウクライナ空爆の出撃基地だった。ベラルーシ国防省は10日午後11時ごろ、軍用車両のエンジンが炎上したとの声明を発表していた。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が、当局者が戦術について報道陣に話すのは「正直言って無責任」と箝口令を徹底する。

どの兵器でどう攻撃したかは「藪の中」だが

クリミアのサキ軍用空港攻撃の宣伝効果について、西側軍関係者は英紙フィナンシャル・タイムズに「グランドスラム(スポーツで主要大会の優勝を独占すること)とゴルフのホールインワンと終了間際の逆転ゴールを合わせたぐらい」と語っている。しかしウクライナ軍がどの兵器を使って、どのように攻撃したのか、真相は「藪の中」だ。

ゼレンスキー氏が箝口令を敷く前には、ウクライナ内務省の元顧問ビクトル・アンドルーシブ氏はテレグラムに「射程200~300キロメートルのミサイルはすでにわが国に配備され、使用されている。今日クリミアで起きた爆発はその証拠だ」と投稿。ウクライナ軍高官は米紙ニューヨーク・タイムズに「もっぱらウクライナ製の装置が使用された」とだけ述べた。

露海軍黒海艦隊旗艦のミサイル巡洋艦モスクワ(約1万2500トン)を撃沈したウクライナ製の対艦巡航ミサイル(射程300キロメートル)を対地攻撃に使用したとする説には、海上と違って障害物が多い陸上で上手く使えるのかという疑問が残る。ウクライナが開発する短距離弾道ミサイル「Hrim2」(最大射程500キロメートル)は実績が不足している。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国の証取、優良上場企業のリファイナンス支援 審査

ビジネス

欧州、ユーロの国際的役割拡大に備えを=オーストリア

ワールド

キューバの燃料事情は「危機的」とロシア、米の締め付

ビジネス

ユーロ圏投資家心理、2月は予想上回る改善 25年7
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日本をどうしたいのか
  • 3
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...周囲を気にしない「迷惑行為」が撮影される
  • 4
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 5
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 6
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 9
    背中を制する者が身体を制する...関節と腱を壊さない…
  • 10
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 9
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 10
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story