ニュース速報
ワールド

米ロ首脳、ウクライナ全面停戦合意せず インフラ攻撃30日間停止

2025年03月19日(水)11時51分

トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領は18日、電話会談を行った。写真は2019年6月、大阪で撮影(2025年 ロイター/Kevin Lamarque)

[ワシントン/モスクワ 18日 ロイター] - トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領は18日、電話会談を行い、ウクライナのエネルギー施設やインフラに対する攻撃を30日間停止することで合意した。ただし、プーチン大統領は米国が提示する広範な停戦案は受け入れなかった。

ウクライナのゼレンスキー大統領は米ロの合意を受け、限定的な停戦案を前向きに検討すると表明。同時に、欧州の安全保障は欧州と共に決定されなければならないとし、欧州もウクライナ和平協議に参加する必要があるとの考えを改めて示した。

ホワイトハウスは、黒海における海上停戦、より完全な停戦、そして恒久的な和平合意に関する協議が直ちに開始されると発表した。

ウクライナが協議に関与するかどうかは不明。米国のウィットコフ中東担当特使は、ウクライナ紛争に関するロシアとの協議が23日にサウジアラビアのジッダで行われると明らかにした。

FOXニュースの番組で「つい最近まで、この2つの側面、すなわちエネルギーとインフラの停戦、および黒海における砲撃のモラトリアムについては、全くコンセンサスが得られていなかった。そして今日、ようやくその段階に到達した。そこから完全な停戦までは、比較的短い距離だと思う」と語った。

ロイターはウィットコフ氏の発言についてロシア大統領府(クレムリン)にコメントを求めたが、現時点で回答は得られていない。

クレムリンによると、プーチン大統領はトランプ氏との会談後、ウクライナのエネルギーインフラへの攻撃を停止するよう軍に命じた。

ただプーチン氏は広範な停戦案について、ウクライナの再軍備を防ぐという点で問題があると指摘。西側によるウクライナへの「軍事支援や情報提供の完全な停止」が恒久的な和平合意の条件になると強調した。有識者の間で、ロシア軍がウクライナ東部で前進を続ける中、プーチン大統領は時間稼ぎを図っている可能性があるとの指摘も出ている。

トランプ大統領はFOXニュースのインタビューで、プーチン氏との電話会談でウクライナ支援について協議しなかったと述べた。

<「永続的な平和」必要との認識で一致>

ホワイトハウスによると、両首脳はロシアとウクライナの戦争を「永続的な平和」で終結させる必要があるとの認識で一致。

トランプ大統領は自身のソーシャルメディアへの投稿で、「非常に良好で生産的な」電話会談だったとし、ウクライナ和平合意に向けた多くの要素について協議したと明らかにした。

さらに「全面的な停戦と、ロシア・ウクライナ間の非常に恐ろしい紛争の終結に向けて迅速に取り組むという理解のもと、全てのエネルギー施設とインフラに関する即時停戦で合意した」とした。

この日はイスラエルがパレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスを標的に大規模攻撃を再開。ホワイトハウスによると、トランプ氏とプーチン氏は中東紛争を予防する手段についても協議し、「イランは決してイスラエルを破壊できる立場に立つべきではない」との見解で一致した。

<トランプ氏のロシア寄り姿勢に懸念も>

戦略国際問題研究所(CSIS)のシニアフェロー、マリア・スネゴバヤ氏は、エネルギー施設とインフラのみを対象とした限定的な停戦合意について、ウクライナ軍がロシアの石油精製所などを効果的に攻撃していることを踏まえると、ロシアに有利になる可能性があるとの見方を示した。

デューク大学サンフォード公共政策大学院の欧州安全保障問題専門家、スーザン・コルバーン氏は、同合意はトランプ氏のロシアとの関係正常化に向けた意欲を反映すると同時に、プーチン氏が時間稼ぎをしている可能性を示唆していると指摘。「ロシアが隣国を侵攻しているにもかかわらず、トランプ氏がロシアに譲歩をほとんど求めていないことは注目に値する」と述べた。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRBが0.25%利下げ、6会合ぶり 雇用弱含みで

ビジネス

〔情報BOX〕パウエル米FRB議長の会見要旨

ビジネス

FRB、年内0.5%追加利下げ見込む 幅広い意見相

ビジネス

FRB独立性侵害なら「深刻な影響」、独連銀総裁が警
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 8
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中