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焦点:航空機エンジン部品で偽造証明書か、全世界で捜索 規制求める声

2023年10月07日(土)08時12分

 10月5日、厳しい規制下にあるはずの航空機ジェットエンジン業界で偽造が疑われる証明書が付いた部品が出回っていることが分かり、問題を起こしかねない部品の捜索が行われている。ロンドンで2017年撮影(2023年 ロイター/Stefan Wermuth)

Tim Hepher Valerie Insinna David Shepardson

[パリ/ワシントン 5日 ロイター] - 厳しい規制下にあるはずの航空機ジェットエンジン業界で偽造が疑われる証明書が付いた部品が出回っていることが分かり、問題を起こしかねない部品の捜索が行われている。この業界では珍しい事件であり、これまでのところこうした部品が使われたエンジンはごく一部にすぎない。しかし不審な部品は世界各地で見つかっており、業界任せの規制体制を見直すべきだとの声が高まっている。

ジェットエンジンメーカーのCFMインターナショナルは、偽造の疑いがある証明書が添付された数千個ものエンジン部品について世界規模の探索に乗り出している。証明書はいずれも同じ部品納入業者のものだ。

例えば2019年に英国の供給業者からフロリダの企業に出荷されたジェットエンジン用の低圧タービンブレードという重要部品には正規品であることを示す署名が付いていたが、署名の名前の従業員は存在していない模様だ。CFMインターナショナルはエアバスやボーイングにエンジンを供給している。

これまでに偽造部品は見つかっていない。しかしCFMは虚偽の証明書が古い部品を新しい部品に見せかけたり、安全性の確保に不可欠なトレーサビリティ(全供給網における追跡システム)を欠く部品を販売したりするのに使われるのを懸念している。世界で最も厳しい監視の目が向けられている業界の一つである航空エンジン業界も動揺しており、規制の強化を求める声が再燃している。

英航空コンサルタント、IBAのフィル・シーモア社長によると、「これは業界にとって目新しい問題ではない。航空機部品で儲けようとする人は常にいる」という。ただ「今回大きな問題となっているのはこうした部品が実際にエンジンに使われたことで、これは初めてのことだ」

CFMの訴訟関連文書によると、最初に不審な部品が見つかったのは6月21日。TAPポルトガル航空の整備部門が、英国の供給業者AOGテクニクスから入手したダンパーと呼ばれる小さな部品の添付書類について不安があると伝えてきた。CFMによると、「その部品は証明書の記載よりも古いように見えた」という。

CFMが新たに公表した訴訟関連書類によると、虚偽の署名があったのは、全ての航空宇宙部品に添付が義務付けられている製造証明書。TAPポルトガル航空は20日間で同じ販売業者からの「重大な不一致」のある書類を24件発見したという。

9月上旬までに中国の規制当局を含む世界中の30余りの機関が同様の不一致を発見した。

AOGテクニクスのコメントは得られなかった。同社は先月、英国の裁判所に対して、CFMの主張についてコメントすることなく、調査に「全面的に協力している」と述べた。

<自主規制に批判も>

CFMによると、これまでに影響を受けたエンジンは126個で、これは全世界の航空機のごく一部にすぎない。問題の部品は交換が進んでいる。

しかし裁判所命令によってAOGから供給を受けた書類の精査が進むうちに、問題部品の数は増える可能性がある。CFMも4日、自社工場用に問題の部品を一部購入していたことを明らかにした。

現在、ジェットエンジンの部品の需要は急増し、供給不足から価格は上昇している。そうした中、今回の事案は、経済的に重要であるにもかかわらず比較的規制の緩い部分がこの業界にあることを浮き彫りにした。

航空機部品の開発業者には厳しい規制があり、製造には別途認可が必要だが、流通のための倉庫の設置に正式な許可は必要ない。「ほとんどの卸売り業者は自己認証であり、規制の必要性が検討されるべき分野だ」とシーモア氏は指摘した。業者は偽の部品を提供すれば自分の首を絞めるだけだと分かっており、固有の品質システムを備え、多くの自主規制を実施しているが、公的な規制認可は存在しないという。

米国では連邦航空局が、航空産業サプライヤー協会(ASA)など第三者機関が販売業者を認定するための基準を設けている。

ただ米運輸省の監察監室(OIG)は過去に供給業者の自主的な認証システムへの監視強化を求めた。2017年の報告書は、書類に不備のある部品数万個が倒産した供給業者から個人の手に渡り、その後通販サイトのイーベイに出品された事例を挙げている。

ロイター
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