アステイオン

アステイオン・トーク

日本文化は「翻訳」できるのか?...「見て、聞いて、味わう」日本文化の本質は「間」にあった

2026年03月25日(水)11時05分
熊倉功夫+桑原ゆう+村田吉弘+佐伯順子
京都御苑

Shawn.ccf-shutterstock


<わかりやすさと深さは両立するのか。料理・音楽・茶の現場より...>


論壇誌『アステイオン』103号の特集「発信する日本文化──伝統と可能性」をテーマに行われた熊倉功夫・MIHO MUSEUM館長、桑原ゆう・国立音楽大学准教授、村田吉弘「菊乃井」三代目主人と佐伯順子・同志社大学教授による座談会より。本編は後編。

◇ ◇ ◇

【前編】「50年前と今の日本料理は全然違う」...それでも変わらない「日本文化」の核心とは? から続く。

桑原 日本は「間(ま)」を大切にする文化と言われますが、言葉で説明するのはとても難しい概念だと思います。共有された感覚や経験に依存するところがあるからです。では、料理で言う「間」は、どういうものでしょうか?

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村田 盛り付けには「間」が必要です。どういう感覚で何を置くかで美しさが決まります。僕らのような日本料理の料理人から見ると、フランス料理の左右対称の盛り付けはあまりきれいには感じないものです。

器と素材がうまく調和しているか、その場所と人に合って全体に調和しているかなどが「間」です。最終的には目の前の相手にどう伝わり、どう喜んでもらえるかが一番大事な「間」の取り方です。

熊倉 間には3つあります。時間的な「間」、スペース(空間)の「間」、そして「位(くらい)」の間で、小笠原流など日本の礼儀作法では「時処位(じしょい)」と言われるものです。

「位」の間はあまり着目されていませんが、実は重要です。料理を出すときにどの器を使うか、その器にどれだけの「位」があるかが問われます。

相手がその価値を理解できなければ、どんな高名な器を使っても意味がない。だからこそ大事なのは、人と人、物と人、物と物の「関係性」をどうデザインするかということです。

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桑原 今は何でも分かりやすさが求められる時代です。現代曲は「難しい」と言われた瞬間に拒絶されてしまいます。

しかし、求められるものばかりを作っていたら、どんどん耳障りのよい娯楽音楽ばかりが増えてしまい、オーディエンスの耳を育てることができなくなる。

だからこそ音楽のクオリティは落とさず、伝え方を工夫して届けることを常に意識しています。村田先生はどうお考えですか。

村田 茶人のように「良い」を分かっている人にも納得してもらい、全然知らない人にも喜んでもらえる料理を目指しています。しかし、食べ手側のこともあるので、これがなかなか難しい。

熊倉 座敷に入っても床の間を見ない人が多い。何が掛かっているかに気づかないとなると、受け手側の問題も大きいですよね。

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