
池坊 京都には本当にたくさんのお寺があります。六角堂はかつての下京の町の真ん中にある庶民のお寺で、祇園祭ではくじ取り式を行い、火事の際には真っ先に鐘をつく。そうやって町の人々の暮らしに密着してきました。その性格はこれからも守っていき、より多くの方に集っていただけるお寺にしていきたいと思います。
佐伯 私は京都生まれではなく、根生(ねお)いの京都人ではありませんが、20年以上京都で仕事をしてまいりまして、その前には大阪で13年勤めました。小学校時代も大阪で、上方文化に長年ふれるなかで、同じ関西といっても、京阪の個性や多様性にも目を向ける必要があると思っております。
大阪は今では近代的な大都市ですが、京都はコンパクトなエリアの中に、お茶室や、能楽堂などが日常的に存在することで、日本文化を身近に感じることができる歴史の集積地として、恵まれた環境ですね。
東京には国立能楽堂、大阪には国立文楽劇場がありますが、これらが伝統を意識しながらも近代建築のなかにおさまっているのに対し、京都では住宅地の街角に能楽堂があり、外からはそれとわからないのに、中に入れば立派な能舞台がある。
東京やほかの地域にも、住宅街のなかに立派な能舞台やお稽古場があることはありますが、徒歩や自転車で移動できる範囲のあちらこちらに、古典芸能の空間が息づいているのが京都の魅力だと思います。
池坊 本当にそうですね。暮らしの中に伝統文化や伝統芸能があり、能や落語、文楽を担う方々が会社員のように身近に存在します。そうした距離の近さは、京都ならではの面白さであり楽しさですね。
構成:山本みずき(東京大学大学院法学政治学研究科特任研究員)
※【後編】「女性初の家元」華道家・池坊専好が挑む、伝統のリブランディングとその覚悟...「池坊を筋肉質にする」とは? に続く。
池坊専好(Senko Ikenobo)
京都市生まれ。学習院大学国文科卒業。立命館大学大学院文学研究科修了。京都工芸繊維大学大学院博士後期課程修了。華道家元池坊の次期家元継承者。2015年に専好を襲名。六角堂(紫雲山頂法寺)の副住職もつとめる。著書に『秘すれば花』(通商産業調査会)、『花の季──池坊由紀の世界』(主婦の友社)など。
佐伯順子(Junko Saeki)
東京都生まれ。同志社大学大学院社会学研究科メディア学専攻教授。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。国際日本文化研究センター客員助教授等を経て、現職。同志社大学京都と茶文化研究センター長もつとめる。専門は比較文化。著書に『「色」と「愛」の比較文化史』(岩波書店、サントリー学芸賞)など多数。
『アステイオン』103号
公益財団法人サントリー文化財団・アステイオン編集委員会[編]
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