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2025年秋、久々に訪れたロンドンで、「日本」や「日本文化」を取り巻く状況が大きく変化していることに驚かされた。
街の至るところで幾度となく見かけるMatchaドリンク。街角にはマンガやアニメのキャラクター・グッズが取り揃えられた店舗がポツポツと増えている。
本屋に足を向ければ、かつて一つの棚しか割当てのなかったmangaが、グラフィック・ノヴェルと一つの売り場を二分するまでに拡大されている。
知人に招待され訪れた英オリヴィエ賞を受賞した舞台『My Neighbour Totoro』(『となりのトトロ』)では、親子連れが劇中歌を口ずさみながら席につき、幕が上がればその劇中歌が日本語で歌われ、至るところに日本語の台詞が散りばめられている。
ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーが共同制作したというから驚きだ。
かつてイギリスで英文学を専攻していた大学学部生の頃、同じウェスト・エンドでシェイクスピア劇の名俳優ジュディ・デンチの演技観たさに舞台劇『Madame de Sade』をロンドンで鑑賞した際、幕間に同級生に言われるまで三島由紀夫・作、ドナルド・キーン訳の『サド公爵夫人』だということに気づかなかったことが、懐かしく思い出される。
筆者が専門とする英訳版日本小説も例外ではない。かつてロンドンの本屋でよく目にする日本の作家といえば村上春樹や桐野夏生に限られ、著者アルファベット順に並ぶ本を片端から探さないことには英訳された谷崎潤一郎・川端康成・三島由紀夫らを見つけることができなかった。
だが今や、本屋の入り口付近や文学セクションには、日本発の小説やミステリーが平積みにされている。大学時代を英国で過ごした頃は、ここまで日本のモノやコトが浸透する日が来ようとは想像すらしたことがなかった。国外における「日本文化」を取り巻く状況は、著しく変わりつつある。
ならば人々は、日本を磁場とした文化のいかなる部分に心惹かれているのか。ここまでのうねりが生み出された背景には、どのような状況が絡んでいるのだろうか。
