中国で5Gが普及すれば軍事にも転用される可能性があるのでアメリカにとって中国の危険性が増す、というのであればまだ話の筋道が通っている。だが、もしそうなのであれば、5Gスマホを作るすべての中国メーカーを禁輸の対象とするだけでなく、アップルが5Gスマホを中国に輸出するのも禁止し、ノキアやエリクソンが中国に5Gの基地局を輸出するのも禁止するのでなければ筋が通らない。しかし、実際にはアメリカはそのような措置をとっていない。中国の5G加入者数は現時点ですでに2億人を超えているとみられ、今年中に全国に60万基の5G基地局を設置する計画も急ピッチで進められている。中国が世界の5Gをリードする状況はいまさら止めようがない。

仮にアメリカがファーウェイの5Gスマホ生産を食い止めることができたところで、それは単にファーウェイのシェアを他のメーカーが奪うだけの話で、中国での5G普及に大した影響は出ないだろう。もともとこの制裁は、ファーウェイがイラン向けに不正輸出をしたという嫌疑から出発しているので、ファーウェイという企業に経済的制裁を加えるのが本来の目的だったはずだ。だが、アメリカ政府がとっている措置はむしろファーウェイにメモリーを提供しているキオクシアや、画像センサーを提供しているソニーといった部品サプライヤーを苦しめ、本来ファーウェイ叩きが目的であったはずが、代わりに日本企業が先に叩き潰されかねない。それでも日本政府は黙っているのだろうか。