この手法は途上国的に見えるが、必ずしもそうとは言えない。著名IT企業を次々と国内に誘致し、労働生産性で世界1位を達成したアイルランドという事例があるからだ。

かつてアイルランドは景気低迷と失業問題に苦慮していたが、米インテルの工場建設をきっかけに半導体や製薬、ソフトウエアなど高度な製造業の誘致を推進。同時に徹底的なIT教育を推進し、優秀な労働者の育成を図った。その結果、多くの国民が高い賃金の仕事に就けるようになり、同国は欧州でも指折りの豊かな国となった。

同じ工場の誘致でも、教育政策とセットにすることで、より高い賃金が得られるという現実をアイルランドは示している。進出企業が獲得する利益は外国のものだが、労働者や取引企業に支払われる金額のほうが大きく、国内経済への貢献度は高い。

TSMC進出をきっかけに、日本は現実的な産業政策に全面的に舵を切るべきであり、これが実現すれば確実に賃金上昇をもたらすだろう。

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