[イスタンブール/アンカラ 26日 ロイター] - トルコのエルドアン大統領が25日、中央銀行の金融政策を激しく攻撃したことで、10年以上にわたりトルコ経済に対する投資家の信頼感をつなぎとめる役割を果たしてきたバシュチュ中銀総裁とババジャン副首相の将来が不安視されるようになった。
トルコ中銀は24日、主要政策金利を0.25%ポイント引き下げた。より大幅な利下げを繰り返し要求してきたエルドアン大統領は翌日、この政策を「トルコ経済の実態にふさわしくない」と攻撃、中銀は外部の影響を受けているのではないか、と疑問を呈した。
トレーダーらはこの発言を、米国在住のイスラム指導者ギュレン師へのあからさまな言及と受け止めた。大統領はギュレン師が国家機関に潜入して大統領の失脚を狙っていると批判しており、昨年にはギュレン師支持者らを警察や司法当局から一斉追放した。
ババジャン副首相は経済を管轄、中銀の独立性を一貫して擁護してきた。25日の大統領の発言後、副首相がダウトオール首相と2時間以上会談したことで、金融市場に動揺が走った。
複数のトルコ紙は、副首相がこの場で辞任を申し出たのではないかと報じた。3人の高官はロイターに対し、そうした協議について何の情報も得ていないと述べた。首相府は、副首相あるいはバシュチュ中銀総裁が辞任したとの観測を強く否定した。
学友でもあるこの2人の去就には密接な相互関係があるとみられている。ババジャン副首相はバシュチュ氏の総裁起用を提案した人物であり、大統領や他の閣僚が金融政策を厳しく攻撃する中、総裁擁護の矢面に立ってきた。
スタンダード・バンク(ロンドン)の新興市場責任者、ティモシー・アッシュ氏は「ババジャン氏もしくはバシュチュ氏がエルドアン大統領の側近から更迭されれば、市場は凄まじい反応を示すだろう」とし、格付け会社フィッチ・レーティングスとムーディーズ・インベスターズ・サービスはトルコを投資適格級から外すことを検討すると予想した。
<6月の議会選挙>
2人がすぐに辞任することはないとしても、6月の議会選挙後に現財の経済政策チームが留任する可能性は低くなったように見受けられる。
与党・公正発展党(AK党)の副首相の任期は3期に限られているため、ババジャン氏の続投は考えにくい。もっとも議会に席を持たない形で閣僚に再任するといった抜け道はある。
バシュチュ総裁の任期終了は2016年。再任を決めるのは首相と副首相だが、最終的には大統領の承認が必要となるため、続投できるとは考えにくい。
ある政府高官は「大統領の発言は事態を崩壊させるには至っていないが、経済チームに圧力を加えた。発言により彼らの信頼性が傷つき、選挙後も同じ閣僚メンバーが留まる確率は低下した」と語る。
トルコの通貨リラは26日、前日の大統領発言が尾を引いて1ドル=2.5リラまで下落した。2週間前には過去最安値の2.5155リラを付けている。
<政策に不透明感>
バシュチュ総裁は学術的理論に長け、尊敬を集めているが、市場からは政策が複雑過ぎると批判されることもあった。しかし政治圧力をかわすために最善の努力を傾けているというのが一般的な評価だ。
6月の選挙が近づくにつれ、政治圧力は高まる一方だろう。
あるシニアバンカーは「大統領の発言でだれも得をしないのは明らかだ。こうした状況下でババジャン、バシュチュ両氏が自らの義務を遂行し続けるのは困難を極めるだろう。今後は中銀がいかなる政策行動を起こしても、政治的動機に基づくものと受け止められるだろう。金融政策の力が損なわれてしまった」と話した。
スタンダード・バンクのアッシュ氏は、エルドアン大統領とダウトオール首相がババジャン、バシュチュ両氏への支持を明確に表明しない限り、投資家は「トルコへのエクスポージャーを減らすだろう」と見ている。
(Asli Kandemir and Orhan Coskun記者)