「推し」を新たなエネルギーとして昇華

確かにその通りかもしれないし、彼女にとっての「推し」が自分の存在を肯定してくれるものであるなら、新しい「推し」を失ったときにはまた「この世界には生きている意味がない」と思ってしまう可能性もあるだろう。

しかし彼女には今、「推し」以外にも大事なものができつつあるという。例えば、先述したパートナーとの関係性がそれだ。

時としてそこには、日常生活において避けることのできない苛立ちなども絡みついてくるだろう。だが、それがこれまで向き合うことのなかった感情なのだとしたら、「推し」を新たなエネルギーとして昇華させられたとも言える。

そしてそれは、「推し活」が現実からの逃避ではなく現実と向き合うための支えになったということを意味するのではないだろうか。

『「推し」という病』
「推し」という病

 加山竜司・著

 文春新書

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[筆者]
印南敦史

1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。他に、ライフハッカー[日本版]、東洋経済オンライン、サライ.jpなどで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『この世界の中心は、中央線なのかもしれない。』( 辰巳出版)など著作多数。2020年6月、日本一ネットにより「書評執筆本数日本一」に認定された。

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