そう指摘するのはニューヨーク大学教授でイランとペルシャ湾岸地域の政治に詳しく、『イランにおけるバザールと国家』(未邦訳)と題する著書もあるアラン・ケシャバルジアンだ。

「それが国内の隅々にまで広がり、さまざまな階層の国民が勇気をもって立ち上がったのだが、この先の展開は読めない」とケシャバルジアンは言う。「体制側が危機に直面しているのは確かだ。なにしろ人々の不満の根は深く、今の指導部には国民の要求に応える能力も意思もないと見限っている」

ケシャバルジアンによれば、市民が抱く疑念は過去の経験に基づく。現在の体制は一貫して市民との対話や交渉には目を向けず、ひたすら強制と暴力に頼ってきたからだ。

ただし市民側にも課題がある。ケシャバルジアンのみるところ、統一された政策を掲げ、組織的に動ける反対勢力はまだ形成されていない。

イランの国内政治では、長らく原理主義派(保守強硬派)と改革派の綱引きが続いてきた。ただし、両派とも最終的には最高指導者アリ・ハメネイ師の言いなりになっている。

大統領のマスード・ぺゼシュキアンは改革派とみられており、24年に保守強硬派のイブラヒム・ライシ前大統領がヘリコプター事故で死亡したのを受けて実施された大統領選では、経済優先と社会的包摂の拡大を訴えて当選を果たした。

だが、その後のぺゼシュキアンは保守強硬派の陣営から反発を受ける一方で、アメリカともイスラエルとも対峙する事態に追い込まれた。

ガザ加担の代償