「アメリカの精神」が揺らぐ

今後数年間の重要な問いは、武力行使による殺害が外国の標的に限られるかどうかだ。トランプ政権が国内の標的も攻撃することは想像に難くない。

国際水域にいる船舶を米軍の無人偵察機プレデターが警告抜きで攻撃するなら、アメリカの排他的経済水域(EEZ)で同じことが起きないとは言い切れない。

公海上と同じことが国内の港や高速道路、個人宅で起きても不思議はない。ICEが国内の主要都市でも取り締まりを強化していること自体、この権威主義的な論理にのっとっている。

政権にとって「好ましくない」民族集団や都市に対する軍事力・準軍事力の行使は、民主主義全体に影響がなかったとしても深刻な問題だが、影響は明らかにある。

力ずくの鎮圧とそれがエスカレートする可能性は、26年以降の選挙の実施条件を変える。政権は民主的プロセスに対する威圧を故意にちらつかせ、自治という「アメリカの実験」も脅かしている。

その一例が共和党支配州(テキサス、ミズーリ、ノースカロライナ)でのゲリマンダー(恣意的な選挙区割り)だ。26年の中間選挙で民主党がこれらの州を獲得する可能性があるため、トランプは自身への「負託」が衰えないよう、共和党に有利な区割りを公然と促している。

法の支配、崩壊へ