消去法でマシな「行政官」

メローニの強さの背景には、極右の支持層を引き付けながらも財政面では慎重な姿勢を崩さず、穏健派や債券市場に安心感を与えている点がある。「ローマ神話のヤヌス神のように彼女は2つの顔がある」と言うのは、パリ政治学院のマルク・ラザール教授(政治学)だ。「国民の感情に巧みに訴える為政者の顔と、国際社会の信頼を得る良識ある政治家としての顔を使い分けている」

野党時代にはEUの財政規律を厳しく批判していたメローニだが、就任後は市場とEU官僚の信頼を得るべく財政健全化路線を打ち出してきた。外交面では現実路線を意識し、ウクライナを一貫して支持。欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長とは時に衝突しつつも建設的な関係の構築に努めてきた。

一方で国内の支持層に対しては、反LGBTQやEU懐疑、排外主義的なメッセージを巧みに織り交ぜ、極右的な主張をトーンダウンさせる気配はない。ドナルド・トランプ米大統領をはじめ外国の右派ポピュリストの指導者とも親交を結んでいる。

もっとも、この3年余りの実績は「オールA」とは程遠い。財政赤字は減ったが、公的債務残高は膨らみ続けている。新型コロナウイルスのパンデミック後、イタリアはEUの復興基金から約2000億ユーロ規模の支援を受けながらも、その資金を十分に活用できておらず、25年の経済成長率はかろうじて0.5%にすぎない。

メローニにとって幸いなのは野党陣営が分裂状態にあること。しかも、その左派の指導者の主張はしばしば庶民感覚と懸け離れているとみられている点だ。

イタリアに「必要なのは救世主ではなく、まともな行政官だ」と、オルシーナは言う。「そうなると消去法でメローニが残るというわけだ」

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