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5月にニュージャージー州で開かれた選挙集会で演説するトランプ EVELYN HOCKSTEINーREUTERS

視聴者にはトランプの施設はさすが豪華だと思ってもらわなくてはならないが、現実は違った。カジノではネオンの電球が切れ、カーペットが悪臭を放っていた。私たちは現実が見えないように撮影した。

ジャクソンとランシックは敗者の中からチームメイトを選んだが、ジャクソンはわがままで評判の悪いオモロサ・マニゴールトを指名するという致命的なミスを犯した。

私たちプロデューサーはロケハンのためゴルフクラブに行き、敷地内の屋敷でトランプと合流した。「メラニアはここの存在に気付いてもいない」。トランプは含み笑いを漏らし、屋敷は婚約者(当時、現夫人)のメラニア・ナウスも知らない火遊び用の隠れ家なのだとほのめかした。

敷地を回り、撮影場所を指定された。贅沢なクラブハウスの撮影は必須だった。クラブハウスに行くと設計した建築家がいたので、たまたま2人になったときに建物を褒めた。彼は礼を言い、こう続けた。

「実は約束の報酬をもらっていないんだ。トランプは半額を前払いし、建物が完成すると残りを踏み倒した」

「払うべきものを払わなかった?」

「もし裁判を起こせば、訴訟費用のほうが高くつく。トランプは分かっていたんだ」。だが不倫の話も、カネを踏み倒した話も、番組で取り上げられることはなかった。

「ニガーで納得できるのか」

課題が終わると、私たちは役員室に戻った。トランプを交えて2人のファイナリストを比較する会議を開くためだ。

トランプが生放送のカメラの前で「決断」するのは数カ月後。この会議を撮影するのは、それまでの流れを視聴者に伝えるためだ。どちらが選ばれるか分からないから、ビデオは両者が接戦だったという印象を与えるように編集する。

「クワミはいい戦力になると思う」と、ケプシャーはトランプに言った。問題児のマニゴールトをうまく扱っていた点を評価したのだ。だが、トランプはしかめっ面で首を横に振る。

「なぜ彼(ジャクソン)は(マニゴールトを)クビにしなかった?」と、トランプは尋ねた。「クビにするのは彼ではなく、あなたの仕事だから」と、ビーンストックは答えた。

「自分に権限があるのを知らなかったんでしょう」と、ケプシャーは言った。トランプはまた首を横に振る。「なるほど」と、トランプは誰に言うともなしに言った。

「だがね、ニガー(黒人の蔑称)が勝つことをアメリカは納得するかな」

「私たちがカットした」...
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