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2004年3月、第2シーズンの出場者をオーディションで選ぶ(左から)ケプシャー、トランプ、ロス、プロデューサーのロブ・ラプランテ FRANK FRANKLIN IIーAP PHOTOーSLATE

せりふの用意はトランプだけ

そうこうしているうちに、ついにトランプの出番が来た。撮影場所はニューヨーク証券取引所だ。この資本主義と富を象徴する場所での撮影は、番組にリアリティーを与えた。

トランプがバルコニーからフロアにいる出場者に向かって最初の課題を発表する。隣には老弁護士のジョージ・ロスや、ホテル部門を任されているキャロリン・ケプシャーら側近が控えていた。

出場者たちは突っ立って、トランプの言葉に驚いたり、ほほ笑んだりするだけだ。

トランプに言ってもらうせりふを除いて、台本はなかった。ビーンストックが書いたせりふを口にするトランプは、その気がなくても相手を怒鳴りつけているように聞こえた。

1回のエピソードはそれぞれ3日で撮影した。初回の課題は、16人の出場者が男女別のチームに分かれて町でレモネードを売るというもの。売り上げは女性チームの圧勝だった。

出場者の1人を退場させる段になると、私たちプロデューサーはトランプ、ロス、ケプシャーと打ち合わせをした。トランプが「忙しい」と言うので、実際にレモネードの戦いを観察し、出場者を評価するのは腹心のロスとケプシャーだった。

『アプレンティス』は米連邦通信委員会(FCC)の監督下にあった。

1950年代にあるクイズ番組で、好感度が高く視聴率を取れる出場者にプロデューサーが事前に答えを教え、博識だが好感度の低い出場者には教えなかったことが露呈し、スキャンダルになった。『アプレンティス』の関係者がクビにする出場者をトランプに指示して勝敗を左右すれば、法に触れかねない。

ライオンの目で女性を品定め

トランプが「用事がある」と言ってミーティングを打ち切ると、私たちは役員室のセットを準備した。

いよいよ番組のフォーマットに従い、負けた男性チームが役員室に呼ばれて1人が脱落するのだ。制作陣は隣のコントロールルームに退き、成り行きを見守った。

8人の出場者は皇帝の前で戦う剣闘士よろしく、トランプの前で自分をアピールしてチームメイトをけなした。

トランプはユダヤ系の若者に対し、商才には「遺伝子」が関係すると思うかと尋ねた。ステレオタイプのタブーを冒しかねない質問に、若者は「思う」と即答。「あなたが両親から遺伝子を受け継いだように」自分もそうした遺伝子を持っていると、よどみなく話した。

決めぜりふ「おまえはクビだ!」誕生
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