研究チームは、粒子法流体力学(SPH)シミュレーションソフトウェアを使い、冥王星と天体との衝突をデジタル再現した。そして、双方の構成物質や、天体の衝突速度、衝突の角度といった不確定要素を入れ替えつつ、シミュレーションを行った。こうしたシミュレーションは、斜めからの衝突という研究チームの仮説を実証し、衝突した天体を構成していたと考えられる物質を特定するのに役立った。

「冥王星の核は非常に低温であるため、(表面の)岩石がきわめて硬く、衝撃によって熱が生じても融けなかった。また、衝突は角度があって低速だったため、衝突した天体の核が冥王星の核に入り込まず、叩きつけられて平板になり、表面に残った」とバランタインは述べた。

このように、低速で斜めの角度から衝突したことで、奇妙な形の地形になったと考えられる。より速度があって、もっと正面から衝突したのであれば、均整の取れた形のクレーターができていただろう。

地下に海が存在しない可能性を示唆

「私たちは、惑星の衝突はきわめて激しい事象であり、エネルギーや推進力、密度といった要素以外の詳細は無視していいと考えることに慣れている。しかし、太陽系のはるかかなたでは、(衝突の)速度はずっと遅く、氷は強固であるため、計算時には一層の正確さが必要となる。面白いのはここからだ」

研究論文共著者でアリゾナ大学の研究者エリック・アスファーグは声明でそう述べた。「スプートニク平原の地下のどこかには、冥王星が完全には同化しきれていない、別の巨大な天体の核が残っている」

こうした発見は、冥王星の内部構造が、もともと考えられていたものとは異なり、地下に海が存在しない可能性を示唆している。かねてから、冥王星の地下には液体の水が存在しているという仮説が立てられてきた。だからこそ、スプートニク平原は、冥王星の赤道付近に位置しているという説明が成り立っていた。

しかし、このたび示された新しい説によれば、スプートニク平原は衝突の起きた場所であるため、地下に海が存在している必要はないことが示唆される。

「私たちが行ったシミュレーションによれば、衝突によって、冥王星に最初から存在していた原始マントルすべてが噴き出した。加えて、衝突した天体の核が冥王星の核に叩きつけられて、局所的に質量が過剰な場所ができた。これなら、地下に海が存在しなくても、赤道に向かう(窒素の)移動があることが説明できる。あるいは、地下に海があったとしても、非常に浅いものであり得る」とユッツィは述べた。

(翻訳:ガリレオ)

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