昨年6月に家賃の支払いが遅れ、大家からロサンゼルスの賃貸住宅を夫とともに退去してもらうと言われたベレアナ・サンチェスさん(33)は、目に見えないアルゴリズムの力によって救いの手を差し伸べてもらった。

サンチェスさんのピンチを見つけ出したのは、ロサンゼルス郡が12カ月以内にホームレスになる危険がある住民を探し出すために試験的に導入した人工知能(AI)だったのだ。

このAIは同郡の刑務所や病院、各種セイフティーネットプログラム、ホームレス動向、児童養護制度などのデータを分析し、路上に放り出される恐れがあるとみなされる10万人のリストを作成している。

自治体当局はそのリストに基づいて相談に乗ったり、現金まで支給したりして人々が「お手上げ」になるのを防ぐ。

実際、サンチェスさんも郡の担当部門から至急連絡してほしいとの手紙を受け取り、すぐに担当職員と話ができて、さまざまな医療福祉プログラムに加入するとともに、金銭的支援を受けて家賃や自動車の修理費などをねん出した。

サンチェスさんはトムソン・ロイター財団に「あのままならば恐らく、私は家を追い出されていた。私と夫は窮地に陥っていて、前に進むにはどうすべきか分からなかった」と振り返る。

AIを活用するロサンゼルス郡の実験が始まったのは2021年。ロサンゼルスを含む幾つかの都市では緊急事態宣言を出すほどホームレス危機への対応が難しくなっている中で、別の地域でもより小規模な形でそうした取り組みが進行している。

ロサンゼルスの場合、ホームレス予防部門がこれまでに対応した数百人のうち、約87%はプログラム終了後も家に住み続けられている、と郡の厚生局でホームレス予防に従事するダナ・バンダーフォード氏は説明した。

バンダーフォード氏は「彼らが危機に直面しているのを発見して電話をすると、彼らは『どうやって私を探してくれたのかは知らないが、来週にも家を失いそうで何をすべきか分からない』と回答する。われわれはどこからともなく出現し、介入して危機を解決できる。本当に誇らしい」と話す。

カナダのカルガリーでも、ホームレスのリスクを予知する上でAIが使われている。このプロジェクト開発を支援しているカルガリー大学のジェフリー・メシア氏は、ロサンゼルス郡の実験は事態を一変させる力を秘めていると評価。「ちょっとした分岐点になると期待している。助けを必要とする人々を特定する上で、機械学習が適切な役割を果たした初めての事例だ」と指摘した。

「正しい技術の使い方だ」