アマゾンのアレクサの開発チームの一員だったサンチェスは、猫のニーズが分かるアレクサのようなデバイスを作れないかと考えた。

当初は猫の首に着ければリアルタイムで人間の言葉に翻訳してくれる装置を構想していたが、1年ほど試行錯誤を続けた末、今の技術ではこの用途に合った軽量で長持ちする電池は入手できないことが分かった。

にゃんトークは妥協の産物だ。

サンチェスは技術者チームと共に、自分が飼っている5匹の猫を実験台にして特定の鳴き声を特定の意図に結び付けるようAIを訓練した。

にゃんトークは猫の11の「一般的な意図」を区別できる。

実際には、「もっと多くの意図があるはずだ」と、サンチェスは言う。

「猫は(多種多様な内容を)音声でとても巧みに表現できる」

サンチェスらが猫の鳴き声を定義・分類する際には、シェッツの研究が大いに役立った。

猫の音声は多岐にわたる。

同じニャーでも微妙なトーンの違いがあるし、喉をゴロゴロ鳴らす音も出せば、うめき声や悲鳴も発する。シェッツが「ミャオジック」と名付けたように、音楽的な鳴き声で意思表示することもある。

猫が飼い主に何らかのメッセージを発信しているのは疑う余地がない。

ただ、にゃんトークがそれを人間の言葉に「翻訳」できると称していることには疑問符が付く。

サンチェスは猫が言語や語彙を持っているような言い方は「厳密には正しくない」と認めた上で、「しかし」と付け加える。

猫には特定の状況で「一貫して発する音声があり、どの猫も普遍的に使う」。それはいわば猫語のようなものだというのだ。

飼い主のエゴをくすぐる

サンチェスいわく、にゃんトークの翻訳は平均7割方当たっている。

ゴロゴロ音については「99.9%」の精度だという。

もっともゴロゴロ喉を鳴らす猫がご満悦なのはアプリがなくても分かる。

猫の社会的行動に詳しい動物行動学者のミケル・デルガドによると、猫は鳴き声だけでなく、表情やしぐさ、におい信号でもコミュニケーションを行うが、その多くは人間には感知できない。

最近の研究によると、猫同士は276種の表情で思いを伝え合うが、人間のそれは44種にすぎないという。

「猫が生きている世界は人間の世界とは質的に異なる」と、デルガドは言う。

「あなたが大好き」と猫に言われたい
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