<平和的に民主化を遂げた点でも、極右政党が政権を争う力にならない点でも「スペインは違う」...。偉大な哲学者オルテガの言葉を胸に刻む、スペイン人について>

スペインは違う──。同国の出来事については、そんなフレーズが頻繁に用いられてきた。

フランコ独裁政権後、平和的に民主制に移行して近代化を遂げた点で、スペインは本当に違った。

極右政党が政権を争う力を持たない点でも他とは違う。一時期、その違いは失われかけているように見えたが、今は何とか立ち直りつつあるようだ。

    

オーストリアやフランスなど、欧州の多くの国は長年、ファシスト政党の抑え込みに苦慮している。一方、スペインでは2大政党の1つ、中道右派の国民党がフランコ派を取り込み、その影響力を薄めた。

変化が起きたのは2014年だ。前年末に設立された極右政党ボックス(VOX、「声」を意味する)が、たちまち大きな支持を獲得。5年後の総選挙では、下院(全350議席)で52議席を得た。

7月23日に行われたスペインの総選挙をめぐって、ボックスはフランコ政権が終焉して以降初めて、政権に参入する極右政党になる寸前に見えた。

事前の世論調査では、サンチェス首相率いる左派連立政権を抑えて国民党が勝利する見込みで、政権樹立にはボックスとの連立が必要とされていたためだ。

だがふたを開ければ、国民党は第1党になったものの下院獲得議席は予想を下回る136議席で、ボックスは19議席減の33議席。両党合わせても過半数に届かず、国民党はボックス以外には連立候補がない。

確かに、サンチェスが党首を務める中道左派のスペイン社会労働党と、連立相手となる左派連合スマール(SUMAR)の合計獲得議席は153議席で、こちらも過半数に届かない。

ただし、バスクやカタルーニャの民族主義地域政党とも手を組めば、再び政権を握れる可能性がある。

サンチェスが続投のチャンスをなんとか引き出せたのは、比較的好調な経済実績のおかげだ。サンチェス政権はインフレを抑制し、着実な経済成長を実現。21年と22年のGDP成長率はいずれも前年比約5.5%で、ユーロ圏トップクラスだ。

もちろん、全てがばら色ではない。失業率は今もEU最悪レベルの12.7%で、ほかの欧州各国と同様、高金利のせいで住宅ローン利用者は追い詰められている。

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