近年、絶対的な支配体制を固めてきた習がこれほど熱くなるのは、外部からの大きな脅威を察知しているからだ。超国家主義的感情をあおり、核戦力を強化し、追い詰められた犬のように虚勢を張る。戦狼外交と無謀な軍事姿勢はまさにその表れだ。

経済では毛沢東の「自力更生」の呼びかけに倣い、西側経済との接点を減らして、極限思維のもと大規模な制裁を乗り切る備えをしている。多くの中国研究者は、習が「内向き」になっているのはイデオロギー的な理由からと考えがちだが、一方で新型コロナ問題に対する習の「やけくそ」な姿勢という視点が抜け落ちている。その姿勢があるからこそ習は、あれほど厳しいロックダウンを不合理なほど長く続けたのだ。

西側諸国は中国に新型コロナの賠償を求めるという圧力をちらつかせる。これに対抗して中国は軍事力の急激な増強を続けようとするが、GDPの成長が止まりつつある状況では持続不可能だろう。そして中国は、1980年代後半の旧ソ連と同じような窮地に追い込まれる。

230704p16NW_Yizheng_Lian.jpg練乙錚

YIZHENG LIAN

香港生まれ。米ミネソタ大学経済学博士。香港科学技術大学などで教え、1998年香港特別行政区政府の政策顧問に就任するが、民主化運動の支持を理由に解雇。経済紙「信報」編集長を経て2010年から日本に住む。
【関連記事】
ニューズウィーク日本版 台湾有事の新シナリオ
2026年4月21号(4月14日発売)は「台湾有事の新シナリオ」特集。

米・イラン戦争で変わる地域紛争の「大前提」/石油危機を恐れるべき理由

※バックナンバーが読み放題となる 定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます