エマニュエル・マクロン仏大統領は、アメリカが新たな関税を導入した場合、EUの「反強制措置」の発動を求めると、大統領側近が明らかにした。これは2023年にEUが中国を念頭に導入した強力な貿易手段だ。ただし一度も使われたことがなく、多くの疑問があるのだが。一方でドイツは、グリーンランドに送った15人のドイツ軍人を、偵察任務は完了したとして引き上げた。

EUは「今年は中間選挙もあるし、なんとか交渉でやり過ごす」のか、「EUを解体しようとする相手に、強い断固たる姿勢を見せて立ち向かう」のか、迷うだろう。もともとトランプ政権は、定まった戦略で一致団結しているとは感じられないが、グリーンランドは「ドンロー主義(西半球主義)」の対象となるだけに、一層判断に困る。なにせ、グリーンランドの首都ヌークは、コペンハーゲンよりもニューヨークのほうが距離が近いのだ。

NATOの終わりの始まり?

しかし、どういう結果になるにせよ、中長期的に見た場合、経済戦争だけでは終わらないだろう。NATOは終焉を迎え始めたと感じさせる。

一番失われたのは信用と信頼である。18日、米テキサス州選出の共和党議員マイケル・マコールは、米ABCのインタビューで「もし軍事的にこの領土(グリーンランド)を侵略すると決定した場合、それは(集団安全保障を定める)NATO条約第5条を覆すことになり、実質的にNATO自体との戦争を開始することになる。その結果、私たちが知っているようなNATOは廃止されることになるだろう」と警告した。

アメリカが信頼できない時代が、欧州にはやってきてしまった。まさかと信じたい気持ちは募るが、日本にも同じ問いをせずにはいられない。「明日」とは言わないまでも、「あさっては我が身」くらいには考えて、日本は一層の多極的な外交努力を行う必要があるのではないだろうか。

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