<BTSのことを、まだ誤解している人がいるかもしれない。2022年グラミー賞にシングル「Butter」がノミネートされているが(発表は日本時間4月4日)、その世界観にしびれた熱狂的ファンは極右勢力と戦って人類に希望をもたらそうとしている>

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さあ戦争が始まった。ウクライナではないし、普通の戦争でもない。

一滴の血も流れていないが、侮るなかれ。この激突に妥協はなく、シビアで、今の時代のイデオロギー対決を反映している。

一方の側には、昨年1月6日に角付きの毛皮帽をかぶり米連邦議会議事堂を襲撃した極右の男たちがいる。対するは、パソコンやスマホの画面にかじりつく熱烈なファン軍団。まさしく究極のポストモダンな戦争だ。

それはアメリカの極右陰謀論者とKポップの、私たちの未来を懸けた壮絶な対決だ。

ありがたいことに、この戦争においてはKポップ側──つまりテクノロジーを駆使してシンセサイザーで音を作り、指を鳴らしたくなるほど明るくて青春全開の韓国製ポップミュージックが勝ち続けている。

その証拠となる記事が今年2月、米ニュースサイト「レディット」に投稿された。

その投稿者が言うには、投稿者の「リベラルな左翼おばさん」は一時期、なぜか「民主党やハリウッド系セレブは人肉を食い、人身売買をしているというQアノンの陰謀論にはまっていた」。しかし彼女は、突然「Qアノン系の話をしなくなり、再びリベラルな人に戻った。どうしたの? まさか認知症? それとも脳卒中?」

いや、違う。この投稿者のおばさんを救ったのは韓国出身の7人組ボーイズグループ、BTS(防弾少年団)だった。

「『Dynamite』がリリースされると、彼女はすぐKポップに夢中になった」と投稿は続く。「Dynamite」はBTSが初めて英語で歌って大ヒットした曲だ。

「今の彼女はメンバーの名前だけでなく、彼らの母親の名前も好きな食べ物も知っている。彼女が言うには、BTSを見たら自分もベターな人間にならなくちゃと思ったとか。確かにBTSは人種差別反対の声を上げ、募金もしている。それで、私のおばさんはARMY(アーミー)になった」

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ARMY(BTSファン)のアクティビズムは団結するファンの数が多いからこそ威力を発揮する AP/AFLO

ARMYはBTSのファン集団を指す語で、「若者を代表する魅力的な進行役」の略。そして世界規模で強力な「善」を促進する勢力だ。BTSが表現する「ラディカルでポップな楽観主義」を掲げ、「世界を癒やす」ためのグローバルな資金調達キャンペーンを展開する。

地球上の何百万人ものファンで構成されるARMYは、南アフリカのレイプ被害者救済からエクアドルの植林事業まで、あらゆる目的のために資金を調達している。

ほとんどの寄付は比較的小規模で、それほど政治的ではない。

だがBTSが2020年にBLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大事)運動に100万ドルを寄付して人種差別に立ち向かうと、ARMYも独自の募金活動を行い、たった25時間で同額の100万ドルを集めてみせた。

Kポップファンたちがトランプに恥をかかせた
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