報告書は委員会の採決を経て、検事総長に提出される。検事総長は勧告を受けて捜査を行うかどうかを決め、捜査を行なった場合は、その結果いかんで最終的に提訴に踏み切るかどうかを決める。ブラジルの法律では、議会の委員会は調査権限を持つが、弾劾訴追はできない。

たとえ検察が動かなくとも、報告書を目にしただけで、ボルソナロが怒り狂うのは目に見えている。極右のボルソナロは来年10月に行われる大統領選で再選を目指しているが、コロナ対応のお粗末さがたたり、支持率は低迷中だ。

「この調査で(大統領が受ける)痛手はおもに政治的なものだ」と、政治コンサルティング会社アルコ・アドバイスの戦略責任者ティアゴ・ド・アルガオンは指摘する。「メディアが大々的に取り上げるから、(野党)陣営は来年の選挙に向けてこれを大いに活用するだろう」

ボルソナロのコロナ軽視は言うまでもない。感染拡大がピークに達したときでさえ、経済を止めたら真っ先に貧困層がやられると主張し、何ら対策を打ち出さなかった。さらに、感染したら抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンを使えばいいと吹聴。この薬は新型コロナには効果がなく、危険性を伴う恐れもあると、多くの専門家が警告しても、全く耳を貸さなかった。

集団免疫を目指し国民を感染させる

半年間の調査で、上院の委員会は何千もの文書を入手し、60人以上の関係者の証言を得た。

「本委員会は、連邦政府が沈黙し、専門性を欠いた無謀な対応を選んだことを示す豊富な証拠を入手した」AP通信が19日に閲覧した初期バージョンの報告書草案には、そう書かれていた。

初期の草案は、殺人とジェノサイド(集団虐殺)の罪でも、大統領を訴追すべきだと勧告していたが、あまりに強い文言を使えば、報告書の信憑性を損ないかねないとの懸念もあり、委員から反対の声が上がったため、この2つの容疑は削除された。

新型コロナでは集団免疫の獲得は困難だと、多くの専門家が警告しているにもかかわらず、非公式のアドバイザーの影響を受けて、ブラジル政府はこの方針にしがみつき、「大量感染の具体的なリスクに、意図的に国民をさらした」と、草案は結論付けていた。

最終バージョンの草案は、ボルソナロに加え、現職とかつての政権スタッフら数十人の側近の訴追も勧告しており、その中には3人とも政界入りしているボルソナロの長男、次男、三男も含まれる。

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