その目的は、加害者を罰することではなく、真実を明らかにして、国内に癒やしをもたらすことだ。南アではこの試みにより、苦痛に満ちた過去がありのままに記録され、その歴史に大きな透明性がもたらされた。

これはアメリカの人種的和解の試みに欠けている重要なカギだ。アメリカは真の意味で、自らの歴史の汚点を明らかにしたことがない。人種的不平等が存在することを否定する人は今も大勢いる。小学校の教科書にさえ、奴隷制の真のレガシーはきちんと書かれていない。

人種的な癒やしを実現するためには、黒人の命も大切であることをアメリカ人が心から受け入れる必要がある。それも現在だけでなく、歴史のいつの時代も、黒人の命はあらゆる人と同じように大切だったことを。

アメリカは、黒人が現在に至るまで被っている人種的不正義を事実として認めることを拒否してきたために、制度的人種差別を蔓延させてきた。政府主導で真実を明らかにする法廷は、「黒人の声に耳を傾ける」という最もシンプルなアイデアを基礎とするものであり、こうした制度を解体する第一歩になるだろう。

©2020 The Slate Group

<2020年11月24日号「バイデンのアメリカ」特集より>

2020年米大統領選で、アメリカの黒人は民主党の大統領候補ジョー・バイデンに、人種的緊張の緩和を託すことにした。
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