それと同時に、本書は、薬物療法における一律的な対症療法を批判する。実際、同じ種類の薬が、うつ病や燃え尽き症候群だけでなく、摂食障害や睡眠障害、椎間板ヘルニア、ストレスによる膀胱機能障害など、多くの精神的・身体的不調に処方されているという。

だが、うつ病というのは、さまざまな要因が相互に影響を及ぼすことで発症するものであり、心と体を一体として見ないことには一向に抜け出せないと著者は説く。確かに重度の場合には薬が必要だが、それでも服用は数カ月間だけで、うつ病は基本的に薬で治療する必要はないのだという。

また、うつ病の原因は脳内のセロトニンやノルアドレナリンの不足だと言う医師がいまだにいるが、うつ病を示す脳内物質はない。うつ病の人にセロトニンが欠乏しているという科学的根拠は一切なく、幸せとセロトニン濃度との関係も一度も証明されていないという。

したがって、これらの物質を操作する抗うつ薬にはほとんど意味がなく、そもそも「抗うつ薬」と呼ぶことが間違っていると指摘する医師もいる。さらに著者は、近年うつ病の患者が劇的に増加しているのは、これらの薬が大量に投与されたからではないかとも述べている。

「どうか的を射たセラピーを」著者のメッセージ

「どうか的を射たセラピーを」――これは著者が一貫して主張している点だ。心理療法や生活環境を変えることの他にも、有効な方法はたくさんある。太陽の下で運動するだけで良くなる人もいるという。

さらに本書には、脳を支配している「思い込み」から抜け出し、脳を新たに再起動することで、落ち込まない自分になるためのトレーニングの他に、やっぱり落ち込んでしまったときに素早く克服するための簡単なテクニックも用意されている。

著者は言う――「いずれにせよ、医学の歴史において、実証されていた方法があとになって間違っていた、いやそれどころか有害であることがわかったケースは、決して珍しいことではありません」。

そう言われると、果たして何を信じればいいのかという気にもなるが、前作に続き本書の日本語訳を手がけた平野卿子氏は、次のように書いている。


(前略)いまさらのように感じたのは、自分の身を守るのは自分しかいないということです。けれどもそれは、まわりに助けを求めないということではありません。他人に迷惑をかけなくないからと、苦しみを隠してはいけない。

激変した日常に誰もが振り回された2020年。「コロナうつ」という言葉も登場しているが、その一方では、今まさに燃え尽きようとしている人々も多いはずだ。

本書で紹介されているのは「小さな一歩」ではあるが、それは間違いなく、晴れやかな日々を取り戻す一歩となるだろう。


敏感すぎるあなたへ――

 緊張、不安、パニックは自分で断ち切れる』

 クラウス・ベルンハルト 著

 平野卿子 訳

 CCCメディアハウス

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落ち込みやすいあなたへ――

 「うつ」も「燃え尽き症候群」も自分で断ち切れる』

 クラウス・ベルンハルト 著

 平野卿子 訳

 CCCメディアハウス

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