さらにアントは、銀行と提携してその効率改善を助けてきた。これは資本コストが安い銀行の強みと、データを駆使してリスク管理できるアントの強みを組み合わせたパートナーシップで、現在提携数は100件以上ある。おかげで銀行は、それまでは見えなかった信用力の高い借り手を大量に発掘することができた。

アントのフィンテックが社会にもたらす恩恵のほとんどは、利益追求の副産物だ。だからこそ、それは持続可能性が高い。アントの最大のビジネスは個人融資であり、家計が一時所得を有効活用したり、大きな支出が必要になったときに管理するのを助けている。もちろんお金を借りやすくすると、借り過ぎる人が出る。それが最終的に金融システムを動揺させる恐れもある。

だが、こうした懸念を裏付ける体系的な証拠は少ない。この領域の研究が進めば、投資家だけでなく、社会全体に恩恵をもたらすアント(とフィンテック全般)の成長の在り方が見えてくるだろう。

[筆者]

魏尚進(ウエイ・シャンチン)

コロンビア大学ビジネススクール教授(金融学・経済学)。アジア開発銀行(ADB)でチーフエコノミスト、世界銀行では汚職対策の政策・研究のアドバイザーなどを歴任した。

©Project Syndicate

<2020年11月17日号掲載>

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